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パーキンソン病を科学する3ー①~パーキンソン病とミトコンドリアの深い関係

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 8 時間前
  • 読了時間: 3分


パーキンソン病とミトコンドリアの深い関係

―「マイトファジー」という細胞の自己管理システムとは?

パーキンソン病(PD)は、脳の黒質という領域にあるドーパミン神経が徐々に失われていく神経変性疾患です。震えや動作緩慢などの運動症状を引き起こすこの病気の原因として、ミトコンドリアの機能障害が近年注目されています。

🔬ミトコンドリア仮説とは?

私たちの細胞の“エネルギー工場”とも言えるミトコンドリア。その働きが乱れると、神経細胞の死を誘発することがわかってきました。

ミトコンドリア仮説のポイント:

  • 複合体Iの機能低下 パーキンソン病患者の黒質では、電子伝達系の「複合体I」の働きが低下していることが報告されています。

  • 活性酸素(ROS)の増加 ミトコンドリア障害によって発生する活性酸素が神経細胞を傷つけ、死に追いやります。

  • ミトコンドリアDNAの損傷 ミトコンドリアのDNAはダメージを受けやすく、修復力も弱いため、長期的にその機能が低下します。

  • 遺伝子変異との関連 PINK1やParkinといった遺伝子は、ミトコンドリアの選別機構に関与しており、その異常がパーキンソン病の発症に関係することが分かっています。

🧹ミトコンドリアを「掃除」する仕組み ― マイトファジーとは?

マイトファジー(mitophagy)とは、傷ついたミトコンドリアを細胞内で除去する仕組みのこと。まるで“壊れた機械を回収して修理・再利用するような”重要な品質管理機構です。

マイトファジーの流れ(PINK1–Parkin経路):

  1. PINK1の蓄積 損傷したミトコンドリアではPINK1というタンパク質が外膜に蓄積します。

  2. Parkinの活性化 PINK1はParkinを呼び寄せ、ミトコンドリア外膜のタンパク質にユビキチンを付加。

  3. オートファジーへ誘導 その結果、損傷ミトコンドリアはオートファゴソームに包まれて分解されます。

🧠この流れがうまくいかないと、神経細胞内に異常なミトコンドリアが蓄積し、黒質のドーパミン神経が死に至る原因となります。

💡治療への期待

現在、**マイトファジーを促進する薬剤(PINK1活性化薬など)**や、ミトコンドリアを保護する抗酸化療法の研究が進んでいます。

パーキンソン病の進行を抑える新たなアプローチとして、今後ますます注目される分野です。

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