「不穏」に対するアプローチ①
- 賢一 内田
- 7月26日
- 読了時間: 3分

―「不穏」とは何か?その本質を考える―
在宅や病院、施設の現場で、「不穏な患者さんへの対応に困っている」という声は少なくありません。今回は、そうした「不穏」状態の基本的な理解と、はじめの一歩としての対応の仕方について考えてみたいと思います。
◆ そもそも「不穏」とは?
「不穏(ふおん)」とは、文字通り「穏やかでない」状態を指します。「なんだかいつもと違って落ち着かない」といった軽度の変化から、「興奮して大声をあげる」「暴言・暴力が出る」といった強い症状まで、幅広く使われる“便利な言葉”です。
現場でも「昨晩は不穏でした」「不穏時はこの薬で」など日常的に使われますが、実はあまり医学的に明確な定義はありません。なぜなら、「不穏」という言葉自体があまりにも多義的であり、具体的にどんな状態かが人によって解釈に差が出てしまうためです。
◆ 「不穏」とされる具体的な場面とは?
「不穏」と一言でいっても、その中身は実にさまざまです。例えば:
昼夜逆転による徘徊
不安や焦燥感からのそわそわした行動
易怒性や興奮による暴言・暴力
幻覚や妄想を背景とした不安定な行動
…など、精神症状を想起させるような多くの行動が「不穏」とされることがあります。
こうした背景には、せん妄や認知症、あるいはその他の精神疾患が関与している場合もありますし、一過性のストレスや環境変化による精神的動揺といったことも少なくありません。
◆ 「病院や施設」はストレス環境?
私たち医療者にとっては日常の風景でも、患者さんにとっては病院や施設は非日常のストレスフルな環境です。
慣れない空間・制限の多い生活・身体の不調。誰しもが不安や混乱に陥りやすい状況にあります。「不穏」とみなされる行動の裏側には、そうしたストレスに対する反応があるかもしれません。
◆ はじめの一手:まずは“背景情報の収集”から
「不穏」な患者さんが目の前に現れたとき、私が最初に行うのはその方の情報収集です。
年齢や基礎疾患
普段の様子(baseline)
「いつから変わったのか?」
「きっかけはあったのか?」
「初めてのことか?」
これらを家族や介護者、病棟スタッフなど、関係者から丁寧に聞き取っていきます。
そして重要なのは、精神症状=精神疾患とすぐに決めつけないこと。全身状態や環境の変化、そして身体的な要因(感染、低酸素、薬剤など)が背景にないかをしっかりと検索することが不可欠です。
◆ 次回に向けて
次回は、この「不穏」な状態に対して、実際にどう対処していくかについて、もう一歩踏み込んで考えていきます。
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