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「首を寝違えた」は思い込み? ― 高齢者に多い“頚椎の偽痛風”とは

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 6月3日
  • 読了時間: 2分

「朝起きたら首が痛い」「首が回らない」「寝違えたかも…」

そんな症状で来院される高齢の方が、実は“首の寝違え”ではなく、**頚椎の偽痛風(Crowned dens syndrome)**を発症していることがあります。

今回は、この「頚椎の偽痛風」を疑うべきポイントと、診断・治療の考え方についてご紹介します。

◆ 偽痛風って何?

偽痛風(pseudogout)は、関節にピロリン酸カルシウム結晶が沈着して炎症を起こす疾患で、特に高齢者の膝関節や手関節などに多く見られます。

しかしこの結晶沈着、頚椎の一部(特に第2頚椎・歯突起周囲)にも起こることがあり、その場合に生じるのが「Crowned dens syndrome(クラウンド・デンス症候群)」です。

◆ どうやって診断するの?

最も確実なのは、頚椎のCT検査です。CT画像では、歯突起の周囲に王冠のような石灰沈着が見られ、これが診断の決め手になります。

実は私も以前この疾患について論文を書いたことがあります。ご興味ある方は、ぜひこちらもご参照ください:

Consideration of the Mechanism for Anterior Condylar Confluent Dural AVF Diagnosed with Neck PainNo Shinkei Geka. 2019 Apr;47(4):419-427.

◆ 在宅医療ではどうする?

問題は、CTが撮れない環境です。たとえば在宅医療では、画像検査がすぐには行えません。

そこで、次のような臨床的な手がかりが重要になります:

  • 発熱の有無(偽痛風では微熱〜高熱がよく見られます)

  • 血液検査で炎症反応(CRP・白血球数)上昇の有無

  • 過去に同様の頚部痛や他部位の関節炎の既往がないか

  • NSAIDs投与での改善反応を見る(診断的治療)

◆ 治療と経過観察

偽痛風は予後良好な疾患です。まずはNSAIDs(消炎鎮痛剤)を1週間程度処方し、経過を観察するのが一般的な対応です。多くの場合、これで症状は改善します。

ただし、経過が思わしくない場合は他の疾患も鑑別に挙げる必要があります。

◆ 鑑別すべき病気

  • 髄膜炎

  • 石灰性頸長筋膜炎

  • 咽後膿瘍

  • 椎骨動脈解離

  • 脊髄硬膜外血腫

  • 化膿性脊椎炎

  • リウマチ性多発筋痛症(PMR)

💡「首を寝違えた」で済ませず、正しい診断を。

高齢者の「寝違えたような首の痛み」には、深刻な病気が隠れていることがあります。頚椎の偽痛風もその一つ。気になる症状があれば、医師の診察を受けましょう。

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