看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する41~エコーで見るリンパ浮腫② ― 病期の評価とセルフケア支援
- 賢一 内田
- 10月12日
- 読了時間: 3分

リンパ浮腫の管理で最も重要なことは、病期を正確に評価し、進行を防ぐことです。問診・視診・触診に加えて、近年ではエコー(超音波)による非侵襲的な病期評価が注目されています。
🔍② 病期進行を適切に評価する ― エコーが果たす役割
リンパ浮腫の病期(ISL分類)は、通常「圧痕の有無」「線維化の程度」で分類されます。しかし実際の臨床では、圧痕や線維化が複数の病期にまたがって現れることも多く、評価者の経験や主観による誤差が生じがちです。
そこで有用なのがエコーによる皮下組織の可視化です。画像で皮下構造の変化を確認できることで、より客観的かつ再現性の高い病期判定が可能になります。
🔸プローブの選択と当て方
使用するのはリニア型(高周波)プローブ周波数は10〜18MHzとし、表在組織の観察に適した設定にします。
四肢の場合は**身体に対して縦向き(長軸方向)**に当てます。浮腫は長軸方向に沿って変化するため、長軸での観察が基本です。
🔸エコーで観察できるポイント
皮下組織の厚みの変化
線維化による高エコー領域
浮腫液による低エコー領域
浅筋膜や深筋膜の連続性・明瞭さ
こうした所見を組み合わせることで、**病期進行の程度(Ⅰ〜Ⅲ期)**を視覚的に判断できます。特に、深部静脈血栓症(DVT)などの他疾患との鑑別にも有効です。
🧠③ エコーで“見える”ことがセルフケアを支える
リンパ浮腫管理のもう一つの柱は、患者自身のセルフケアの継続です。エコー画像は患者にとって“目で見える変化”となり、モチベーション維持に大きく寄与します。
📈 エコーを使ったフィードバック例
外来受診のたびにエコーで皮下浮腫を観察
圧迫療法・リンパドレナージ後の変化を可視化
セルフケアの成果を医療者と共有
このように**“見える化”がセルフケア意欲を高める**ことで、治療効果の維持・再発防止にもつながります。
💡健常な皮下組織のエコー像を知る
図のように(例:前腕内側部)、健常な皮下組織では以下の特徴が見られます。
深筋膜は**白く明瞭な連続線(高エコー)**として描出
筋肉との境界がはっきりしており、筋収縮に伴って動く部分が明瞭
皮下層は白黒のコントラストがあり、浅筋膜が連続して観察できる
これは過剰な組織間液の貯留がない健康な皮下構造であり、リンパ浮腫との比較評価に役立ちます。
🩶まとめ ― “見える評価”が正確なケアを生む
エコーによるリンパ浮腫評価は、🔹客観的な病期判定🔹他疾患との鑑別🔹セルフケア支援のすべてをサポートするツールです。
非侵襲的・リアルタイム・再現性の高さという特性を活かし、**「見て伝えるケア」**を実現することが、今後のリンパ浮腫管理の鍵となります。




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