看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する16~【便秘ケアの新常識】超音波(エコー)で「見える化」する排便評価
- 賢一 内田
- 8月6日
- 読了時間: 3分

便秘は多くの患者にとって身近な問題ですが、適切な評価がなければ「見逃し」や「誤ったケア」によるリスクも存在します。今回は、エコーを活用した便秘評価について解説します。
なぜ便秘評価に“エコー”が必要なのか?
便秘は排便回数だけで判断してはいけません。たとえば──
排便がないと思って下剤を投与したら、実は下痢だった
坐薬を使ったのに、便が直腸に無く効果がなかった
宿便に気づかず浣腸をして、直腸穿孔を起こした
こんな経験、現場では珍しくありません。
従来の直腸診は不快感を伴い、高齢者や認知症患者では評価が困難なことも。そこで注目されているのが、**非侵襲的でリアルタイムに観察可能な「超音波(エコー)」**です。
便秘評価でエコーができること
評価項目 | エコーでわかること |
排便状況の把握 | 結腸・直腸内に糞便が貯留しているかどうか |
便秘の病態の確認 | どこにどんな便が溜まっているかを視認可能 |
排便ケアの評価 | 排便後の残便やケアの効果確認もできる |
便秘のタイプを見極める(病態に応じたアプローチ)
便秘は大きく2タイプに分類されます:
排便回数減少型:結腸に糞便が過剰にたまりやすい
排便困難型:直腸に糞便があっても排出できない
→ エコーではこの**「結腸型か?直腸型か?」の判断**が可能になります。
結腸のハウストラに便が貯留 → 腸蠕動の低下や便量の増加を示唆
直腸の高エコー域(白く映る) → 糞便塞栓の可能性
排便後も残便像が確認される → ケア不足や排出困難型の可能性
現場でよくある便秘評価の“すれ違い”
従来の評価方法 | エコーによる改善点 |
排便日誌や自覚症状に頼る | 認知症や失語症でも便貯留の可視化が可能 |
直腸診に頼る | 非接触・非侵襲で評価できる |
「とりあえず下剤」 | 貯留部位に応じた的確な投与ができる |
Rome IV診断基準でも便秘は定義されている
国際的には「Rome IV 機能性便秘診断基準」が用いられます。たとえば以下のような症状が週1回以上出現し、3か月以上持続していれば診断基準を満たします:
排便時の強いいきみ
硬い便(ウサギの糞状)
排便後の残便感
肛門の閉塞感・排便困難感
用手的な排便介助が必要
排便回数が週3回未満
→ こうした症状がある場合、エコーによる評価が有用です。
エコーでの具体的な便秘観察とは?
以下のような状況を観察できます:
結腸全体の拡張・内容物の性状(ガス、液体、固形など)
直腸内の便の有無・硬さ(特に白く高エコーに映るもの)
排便後の残便確認(ケアの評価)
腸蠕動が見られるかどうか(動態観察)
→ つまり、便の「有無・場所・硬さ・排出具合」まで一目で判断可能です。
まとめ:便秘ケアの新たな選択肢に「エコー」という視点を
便秘の評価において、“出たかどうか”だけではなく、“溜まっているかどうか”を診ることが重要です。
超音波エコーによって、これまで“感覚”で判断していた便秘が**「可視化」**できるようになります。患者の苦痛を減らし、より適切なケアにつなげるために、エコーという新しい視点をぜひ日常臨床に取り入れてみてください。
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