在宅医療における認知症について15~前頭側頭葉変性症(FTLD)とは?
- 賢一 内田
- 8月10日
- 読了時間: 2分

前頭側頭葉変性症(FTLD: Fronto-Temporal Lobar Degeneration)は、前頭葉や側頭葉が徐々に萎縮することで起こる認知症の総称です。アルツハイマー病に次いで多い神経変性型認知症で、症状やタイプは多様です。
主なタイプ(表16)
(行動異常型)前頭側頭型認知症前頭葉の機能が低下し、感情や行動のコントロールができなくなります。
無関心(自発性低下)
脱抑制(欲求を抑えられない)
時刻表のように同じ行動を繰り返す
模倣行動・反響言語など周囲に反応しやすくなる
意味性認知症側頭葉の障害で「言葉の意味」がわからなくなります。
単語や物の名前が出てこない
写真や物はわかっても名称が言えない
信号や標識の意味が理解できず、運転トラブルの危険も
進行性非流暢性失語症話すことが困難になり、言葉が途切れ途切れになったり、発音や文法が崩れます。
アルツハイマー病との違い(表17)
項目 | 前頭側頭葉変性症 | アルツハイマー病 |
神経病理 | 蓄積タンパクの種類が多様 | アミロイド+リン酸化タウ |
行動 | 他人の目を気にせず行動 | 家族や場面で行動変化 |
記憶 | 言葉の意味理解が障害されやすい | 直近の出来事が思い出せない |
病気の進行と予後
アルツハイマー病よりも進行が早い傾向(MMSE低下速度:FTLDは年間6.7点、ADは2.3点)
平均生存期間は 8〜9年(ADは約12年)
運動ニューロン疾患を伴う場合は予後がさらに短縮
治療について
残念ながら根本的な治療法は未確立です。
行動障害には抗うつ薬(例:トラゾドン)が有効な場合あり
一方で、抗認知症薬(ドネペジル等)はむしろ症状を悪化させる可能性があるため推奨されません
注意すべきポイント
初期から社会的ルール違反(窃盗・交通違反・性的行動など)がみられることがあり、認知症の初期症状として見逃されやすい
言語障害や意味理解の障害は日常生活や安全運転に直結するため、早期の環境調整が必要
まとめ前頭側頭葉変性症は、「人格や行動の変化」「言葉の意味がわからない」「話しにくい」など、タイプによって症状が大きく異なります。アルツハイマー病とは原因や症状の出方が違うため、正しい診断と対応が重要です。周囲の理解と環境の工夫が、患者さんの生活の質を守る鍵となります。レビー小体型認知症
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