エビデンスに基づく健康情報~1
- 賢一 内田
- 6 時間前
- 読了時間: 4分

健康習慣は「感情」で決まる
― 知識だけでは人は変われない理由 ―
私たちは「健康に良いと分かっていること」を、なぜ続けられないのでしょうか。運動、食事、睡眠、禁煙――どれも大切だと知っているのに、三日坊主で終わってしまう経験は誰にでもあります。
本講義では、**健康習慣の開始と維持を左右する中核要因は「感情」**であることが、行動科学・公衆衛生の視点から解説されました。意思の強さや知識量ではなく、感情をどう設計するかが行動変容の鍵になります。
感情は健康に「直接」と「間接」の2経路で影響する
感情は健康に二つのルートで作用します。
① 直接的な影響
怒りや強いストレスは、血圧上昇や自律神経の乱れなど、即座に身体反応を引き起こします。
② 間接的な影響(より重要)
感情は意思決定を通じて、
運動するか、しないか
食べ過ぎるか、控えるか
生活習慣を変えるか、現状維持か
といった日々の選択を左右し、結果として健康アウトカムに影響します。
多くの場合、行動が止まる原因は「知識不足」ではなく「面倒くさい」「気まずい」「疲れた」といった感情です。
人間は理性的ではなく、感情にハイジャックされる
行動経済学では、人の意思決定は次の2つのシステムで説明されます。
システム1:直感的・感情的・自動的
システム2:論理的・熟考的・理性的
私たちは普段、無意識にこの2つを使い分けていますが、疲労やストレス、強い感情があるとシステム1が優位になり、「分かっていてもやってしまう/やらなくなる」状態に陥ります。
つまり、👉 知識があっても、感情次第で行動は簡単に変わるというのが人間の本質です。
健康習慣は4つのプロセスでできている
健康習慣の形成は、次の4段階で進みます。
決意(やろうと決める)
行動(実際に動く)
反復(繰り返す)
自動化(考えなくてもできる)
この中で、感情が特に重要なのは「決意」と「維持(反復)」です。
開始時は一時的な高揚感で動けても、数週間後には疲労や気分の落ち込みが行動を止めてしまう。この「感情の谷」をどう乗り越えるかが、習慣化の分かれ道になります。
意志の力に頼らない「感情ベースの設計」が必要
行動を続けるために有効なのは、「頑張る」ことではなく「やりたくなる仕組み」を作ることです。
例えば、
運動 → 楽しい・気持ちいい
食事 → 美味しい・満足感がある
習い事 → 会いたい人がいる
といったように、感情に直結する価値を組み込むことで、理屈ではなく「行きたい」「続けたい」という気持ちが行動を支えます。
認知の歪みは「感情の言い訳」として生まれる
行動できないとき、人はしばしば無意識に理由を作ります。
「今は忙しいから仕方ない」
「やらなくても大きな問題はない」
これらは、面倒さや疲労といった感情を正当化するための認知の歪みです。感情を責めるのではなく、「感情が出る前提」で対策を考えることが重要です。
公衆衛生・行動科学で高まる「感情研究」
公衆衛生や行動科学の分野では、この10〜15年で感情と意思決定に関する研究が急増しています。
従来の「正しい知識を与えれば人は行動する」という前提が現実と合わないことが明らかになり、感情を中核に据えた介入設計が重視されるようになりました。
睡眠はすべての継続力の土台
最後に、非常に重要なポイントです。
睡眠不足は、決断力と継続力を著しく低下させます。
判断が雑になる
面倒さを感じやすくなる
感情のコントロールが効かなくなる
何か新しい健康習慣を始めたいときは、まず睡眠を整えることが最優先です。
まとめ:健康行動は「感情デザイン」から始める
人は理性ではなく感情で動く
健康習慣の土台は「感情」
意志の力に頼らず、感情が自然に動く設計を
睡眠はすべての行動変容の基盤
健康行動を「我慢」や「努力」の問題にしないこと。感情を味方につける設計こそが、続く健康習慣への近道です。

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