創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する⑧~【褥瘡対策のすべて】発生メカニズムから予防・ケア・治療法まで徹底解説
- 賢一 内田
- 6月16日
- 読了時間: 3分

~看護・介護現場で実践したいエビデンスに基づく褥瘡対策~
■ 褥瘡とは?定義と分類
日本褥瘡学会では褥瘡を以下のように定義しています:
「身体に加わった外力が、骨と皮膚表層の間にある軟部組織の血流を低下または停止させ、この状態が持続することで不可逆的な阻血性障害を起こしたもの」。
近年は、自重による圧力だけでなく、**医療関連機器による圧迫(MDRPU:Medical Device Related Pressure Ulcer)**も、広い意味での褥瘡に含まれるとされています。
■ 褥瘡発生のメカニズム
褥瘡は単なる「圧迫」による阻血だけでなく、以下のような複合的な要因が関与しています:
阻血 → 再灌流障害
リンパ還流障害
ずれ力・摩擦による機械的変形
組織耐性の低下(栄養不良・浮腫・乾燥・加齢など)
骨突出部では圧力が一点に集中するため、深部組織の壊死が表面に先行して進行することもあります。
■ 好発部位と体位ごとの注意点
姿勢 | 好発部位 |
仰臥位 | 仙骨部、踵、後頭部、肩甲部 |
側臥位 | 大転子部、耳、膝の内側 |
腹臥位 | 顔面、乳房、恥骨部 |
座位 | 坐骨部、尾骨部、足底 |
患者の姿勢に応じて、重点的に皮膚観察を行うことが重要です。
■ 褥瘡予防ケアの4本柱
1. 圧力・ずれ力のコントロール
体圧分散マットレス:個々の状態に応じて選定し、体圧40mmHg以下を目指します
体位変換:2時間ごとが原則、適切なマットレス使用時は最大4時間間隔も可
ポジショニング:30度側臥位やクッション活用で圧の分散を図る
ずれ力対策:頭側挙上時の姿勢調整、スライディングシート使用など
2. スキンケア
保湿ケア:乾燥皮膚は摩擦係数が高くずれに弱いため、適切な保湿が必須
浸軟防止:失禁対策・吸汗素材の活用などで皮膚の過湿を防止
皮膚保護材:摩擦・ずれに弱い部位にはフィルム材やリモイスパッド等を活用
3. 栄養管理
栄養不良は褥瘡発生・治癒遅延の最大要因
NSTとの連携で**エネルギー・蛋白質・微量元素(亜鉛、ビタミンC等)**を補給
4. リハビリテーション
早期介入による筋委縮・拘縮予防
理学療法士との連携で適切な運動療法・ポジショニング指導を
■ 局所治療の選択肢
● 外用剤
抗菌・壊死組織除去・上皮形成促進など、創の状態に応じて使い分け
● ドレッシング材
湿潤環境の維持・感染予防・肉芽形成を促進(例:ハイドロコロイド、ポリウレタンフォーム、銀含有素材など)
● 物理療法
NPWT(局所陰圧閉鎖療法)
電気刺激療法・超音波・光線療法・水治療法
高圧酸素療法、振動療法
■ 外科的治療と生物学的治療
デブリードマン(壊死組織除去):鋭匙・保存的など創に応じた選択を
再建術:皮弁術・植皮術
マゴットセラピー:無菌ウジ虫による選択的壊死組織除去
■ 評価スケールの活用
リスク評価:ブレーデンスケール、厚労省評価票、K式スケールなど
治癒評価:DESIGN-Rスケール(褥瘡の重症度・治癒経過を数値化)
週1回程度の定期評価と、それに基づくケア計画の見直しが重要です。
■ おわりに
褥瘡対策は単発のケアではなく、全身管理+皮膚ケア+生活支援のトータルアプローチが不可欠です。現場では「誰が・いつ・どの方法で」予防・介入を行うかをチームで共有し、**“予防に勝る治療なし”**の原則を意識したケアの積み重ねが、患者のQOL向上につながります。
参考文献1)日本褥瘡学会編:褥瘡予防・管理ガイドライン(第4版)照林社, 20152)日本褥瘡学会編:MDRPUベストプラクティス, 照林社, 20163)DESIGN-R スケール活用ハンドブック(褥瘡状態の定量的評価に)




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