看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する16~【便秘ケアに役立つ】直腸のエコー観察法と描出のコツ
- 賢一 内田
- 8月8日
- 読了時間: 3分

便秘のアセスメントにおいて、直腸内の便の有無や性状を正確に評価することは非常に重要です。従来の直腸診は不快感や羞恥心のリスクも伴いますが、エコー(超音波)検査なら非侵襲的に直腸の状態を可視化することができます。
直腸を“見える化”する基本構造とプローブの位置
直腸の観察では、身体の構造をランドマークとして活用します。
観察位置:プローブを恥骨結合の直上に当てる
ランドマーク:
男性:膀胱 → 前立腺 → 直腸
女性:膀胱 → 子宮・腟 → 直腸
膀胱に尿がたまっている場合、**無エコー域(黒く抜ける)**として描出され、直腸の確認に役立ちます。
直腸の観察手順

① 横断走査(断面像)
プローブを腹部正中線上の恥骨結合直上に横方向で当てる
軽く頭側に傾け、**膀胱(黒)とその下の前立腺・子宮(灰色)**を描出
その下の直腸を高エコー構造+後方音響陰影として観察
🎯ポイント:・プローブはややしっかりめに押し当てる・深度やゲイン(明るさ)を微調整しながら中央に直腸像を収める
② 縦断走査(長軸像)
プローブを90度回転させ、縦方向で当てる
無エコー域の膀胱を確認したら、左右方向に扇動走査(30°以内)
直腸の連続した長軸像を観察
👁🗨 糞便があると、直腸内に高エコー+音響陰影が描出されます。
実際の描出例と性差による特徴
観察像の特徴 | 男性 | 女性 |
ランドマーク | 前立腺 | 子宮・腟 |
直腸の位置 | 前立腺の下方 | 子宮・腟の下方 |
→ この構造の違いを理解することで、より正確な直腸の描出と便性状の評価が可能になります。
ブリストル便性状スケールとエコー所見の一致
便の評価には、「ブリストル便性状スケール(BSFS)」が活用されます。このスケールでは、便を1〜7の硬さに分類します。
スコア | 便性状 | エコー所見の傾向 |
1〜2 | 硬便(兎糞状〜硬いソーセージ状) | 高エコー+強い音響陰影で確認可能 |
3〜4 | 普通便 | 中等度のエコー反射 |
5〜7 | 軟便〜水様便 | 反射は弱く、不定型・無エコーに近い |
→ エコー画像と便性状は相関性が高く、硬便の見極めに特に有効です。
観察時の注意点と配慮
基本は仰臥位で観察。腰痛などある場合は膝を立てるなど体位調整を。
プローブは恥骨結合直上に置くため、下着を下げる必要があります。
羞恥心への配慮が大切。必ずバスタオル等で露出部位以外を覆い、個室・カーテン対応を行いましょう。
まとめ:直腸エコーは、非侵襲で安心できる排便評価法
直腸エコーを活用すれば…
「便があるのか、ないのか」を視覚的に判断
不適切な下剤や浣腸を回避
患者の苦痛と羞恥心を最小限にしたケアが可能に
特に高齢者・認知症患者・言語障害のある方の便秘評価において、大きな武器となります。
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