在宅医療における「尿閉」対応の基本と実際~バルーンカテーテル留置から膀胱穿刺まで~
- 賢一 内田
- 7月21日
- 読了時間: 3分

在宅医療では、尿閉(尿が出せなくなる状態)はときに緊急対応を要するトラブルの一つです。今回は、実際の対応方法について、実践的なポイントを紹介します。
1. 導尿(バルーン留置)の基本手技と注意点
在宅での導尿において、以下の3つの点を意識することで成功率が高まります。
(1)カインゼリーを十分に注入する
滑りを良くし、痛みの軽減にもつながります。挿入抵抗の軽減にも有効です。
(2)ペニスをしっかり引っ張り上げる(牽引)
男性の尿道は生理的に湾曲しています。牽引によりこの湾曲を可能な限り直線化することで、挿入がスムーズになります。
(3)やや太めのカテーテルを使用する
16Fr〜18Fr程度のカテーテルが推奨されます。細いカテーテルは「コシ」が弱く、力が伝わりにくいため、かえって挿入困難になることがあります。
※注意:強引な導尿は偽尿道形成や出血のリスクがあります。無理は禁物です。
2. バルーン困難例では「チーマンカテーテル」の選択も
前立腺肥大や尿道狭窄などがある場合、バルーン留置が困難なこともあります。このようなケースでは、「チーマンカテーテル」が有用です。
● チーマンカテーテルとは
細径でやや硬めのカーブをもつカテーテルで、狭窄部を「ブジー効果」で広げつつ膀胱まで挿入する構造。尿道狭窄や前立腺肥大例でも導入しやすい特徴があります。
※画像や実物を添えると理解が深まります。
3. 導尿困難時の最終手段:膀胱穿刺(在宅対応可能)
導尿がどうしても不可能な場合、在宅医療では膀胱ろうの造設は困難なため、経腹壁的膀胱穿刺を実施することになります。
実際の手順(超音波ガイド下)
エコーで膀胱の尿貯留を確認
下腹部を消毒、穿刺部位は正中線上で恥骨上1~2横指程度の部位
局所麻酔後、18Gのサーフロー針を挿入
外筒を残して点滴チューブなどで排尿
尿が抜けたら抜去し、止血・処置
※膀胱までの距離は事前に超音波で確認し、安全に行います。
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まとめ
尿閉は在宅医療でも一定の頻度で遭遇する場面です。ポイントを押さえた安全なバルーン留置、代替手段としてのチーマンカテーテル、最終手段としての膀胱穿刺と、対応策を多段的に持つことで安心してケアを提供できます。
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