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パーキンソン病と日中傾眠:在宅医療の現場から

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 6月11日
  • 読了時間: 3分

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80代の男性患者が、無動による横紋筋融解症を契機に救急搬送され、その後パーキンソン病(以下PD)の診断を受けて在宅療養を開始されました。治療初期(いわゆる“ハネムーン期”)では、L-ドーパに加えMAO-B阻害薬などを用いた薬物治療が奏功し、順調に日常生活を送られていました。

積極的な治療の中で現れた「日中の傾眠」

PDの治療では、長期的には薬効の減弱が問題となりますが、この方の場合はむしろ無動による廃用(機能低下)を防ぐことが優先課題と判断し、ドパミンアゴニストなど2ndライン薬剤の導入を積極的に行っていました。

ところがある時期から、日中の強い眠気や診療中に突然眠ってしまうような“突発睡眠”を認めるようになりました。これはPDにしばしばみられる非運動症状のひとつである睡眠障害の一部と考え、L-ドーパの調整なども試みましたが大きな改善はみられませんでした。

「薬をやめる」選択で見えたこと

結果的に、2ndライン薬であるドパミンアゴニストの休薬により、症状は劇的に改善。患者さんは再び日中の活動性を取り戻すことができました。これほど明確に「薬の中止=症状改善」を経験したのは、臨床の現場でも初めてでした。

ドパミンアゴニストによる日中傾眠・突発睡眠については以前から注意喚起されていますが、その明確な病態機序については文献でも統一した記載が見つからず、改めて「臨床は教科書通りにいかない」と痛感した一例でした。

パーキンソン病と睡眠障害:見逃せない“非運動症状”

PDといえば「振戦(ふるえ)」「筋固縮」「寡動」「姿勢反射障害」といった運動症状が有名ですが、実は“非運動症状”が生活の質(QOL)に深く関わっています。その中でも睡眠障害は非常に頻度が高く、患者の6割以上にみられるとされます。

主なものとしては以下のような症状があります:

  • 不眠(36.9%)

  • REM睡眠行動障害(RBD)(29.6%)

  • 日中傾眠(EDS)(21.2%)

こうした症状は、病気そのものの一部として現れることもあれば、抗PD薬の副作用として生じることもあり、個別に評価と対応が必要です。

在宅で支えるパーキンソン病治療

在宅医療では、患者さん一人ひとりの生活リズムや副作用の出方を細やかに観察できるという利点があります。今回のように薬剤調整が奏功したケースは、まさに在宅医療の真価が発揮された瞬間だと感じています。

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🔽 内田賢一 - YouTubehttps://www.youtube.com/@shounan-zaitaku

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