ヒルドイドソフトは本当に保湿剤?──化学と臨床から見る「保湿」のギャップ
- 賢一 内田
- 10 分前
- 読了時間: 2分

皮膚の乾燥や皮脂欠乏症の治療薬として、医療現場で頻用されているヒルドイドソフト(ヘパリン類似物質軟膏)。この薬は、保湿目的で多く処方される一方で、美容目的の乱用が一時社会問題となったことでも話題になりました。
では、そもそもヒルドイドソフトは「保湿剤」として本当に適切なのでしょうか?
🔬 成分から見るヒルドイドの真実
医師であり創傷治療の第一人者でもある夏井睦先生は、2011年の時点でこの疑問に対して鋭い視点を提示していました。以下にそのポイントをまとめます:
主要成分:
ヘパリン類似物質₁
グリセリン
流動パラフィン
白色ワセリン
サラシミツロウ
グリセリン脂肪酸エステル₂(=合成界面活性剤)
化学的観点からの問題点:
ヘパリン類似物質₁は親水性で、水分子と結合しやすく「保湿能力がある」とされるが、それはあくまで**“水分を保持する”能力であり、“水分を与える”能力**とは別。
グリセリン脂肪酸エステル₂は界面活性剤であり、皮脂を溶かす作用=バリアを壊す作用がある。
夏井先生はこれらをふまえ、「ヒルドイドソフトは肌を乾燥させる」とし、極端に言えば「台所用洗剤を肌に塗るのと同じ」とまで表現しています。
🧪 一方、臨床では「保湿効果あり」とも?
興味深いのは、ヒルドイドソフトの添付文書や製薬会社の公式見解です。
添付文書によれば、皮脂欠乏症の改善率は95%(国内119例の臨床試験)
製造販売元のマルホ社のFAQでは、「確かに乳化剤(界面活性剤)を含むが、モルモット実験では皮膚バリア機能の低下は確認されず、角層水分量はむしろ増加傾向」としています。
🤔 なぜこの矛盾が生まれるのか?
夏井先生は、著書『患者よ、医者から逃げろ』(光文社新書)の中で次のように警鐘を鳴らしています。
「ヒルドイドソフトを塗った状態の肌は、いわばドーピングと同じである。本来の皮膚の保湿能力は、洗い落とした後に評価すべきである。」
つまり、「保湿効果があるように見える」=「肌が本当に潤っている」とは限らない、ということです。
🎥 YouTubeで学ぶ、正しい在宅診療とスキンケアの知識
皮膚のケアに関する知識も、在宅診療の中では極めて重要なテーマです。日々の医療現場から学びたい方は、ぜひ下記チャンネルもご覧ください。
Comments