ご高齢の患者さんの悩みの一つに眠れないというのがあります。 高齢者の不眠は生理的変化の一つで、実際に寝ている時間は加齢とともに短くなり、高齢者では6時間以下と言われています。 高齢者は熟眠感を得られる徐波睡眠の時間が短くなり、また中途覚醒時間が長くなります。
まずは睡眠の具体的な状態を詳しく聞きます。睡眠に関して聞くべき点は①眠剤の内服時間②就寝時間③入眠までの時間④中途覚醒の有無 ⑤起床時間⑥昼寝の有無⑦日中の覚醒状態などです。
眠剤処方の注意点として重要なことは、ベンゾジアゼピンを極力処方しないようにしています。 ベンゾジアゼピンの問題点は、①依存性②認知機能が低下③せん妄④筋弛緩作用による転倒や骨折⑤誤嚥性肺炎のリスク上昇
昨今問題になっている高齢者の自動車事故も実はベンゾジアゼピンの内服が背景にあるのではないかとも言われています。 高齢者の不眠に関して
①生活指導 昼夜逆転傾向がある場合は、日中にできるだけ刺激を与え起きてもらえるように指導します。昼寝をさせず、運動させるのが良いです。 また、施設などの場合、眠剤を寝る直前ではなく夕食後の18時などに内服させている場合があるために、21-22時前に内服しないように指導し、処方箋のコメントにも「21-22時前に内服しないように」と書いておきます。 また、寝ている人を起こして眠剤を飲ませるといった本末転倒のケースもあるため、できるだけ頓服として処方します。
②デジレルを処方 処方例 デジレル25 or 50mg 1錠 分1 就寝前 デジレルは抗うつ薬ですが、深睡眠を増やすと言われています。副作用が少なく依存性もないため使いやすいです。
③夜間に不眠というよりはせん妄が起きていそうな時は、抑肝散やセロクエル、ロゼレムを処方 処方例(下記のいずれか) 抑肝散2.5g 1包 分1 就寝前 セロクエル錠25mg 1錠 分1 就寝前 (糖尿病では禁忌) ロゼレム錠8mg 1錠 分1 就寝前
④非ベンゾジアゼピン系睡眠薬を処方 処方例 アモバン7.5mg 分1 就寝前 非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は筋弛緩作用が弱く使いやすいですが、それでも転倒のリスクは上がります。非ベンゾジアゼピン系睡眠薬だから安全というわけではありません。
⑤ベルソムラを処方 処方例 ベルソムラ15mg 分1 就寝前 アモバンだと中途覚醒してしまうようであれば、ベルソムラを処方します。 最小の15mgでも高齢者に使うと、翌日まで持ち越してしまうことがよくあり、今後10mgが処方できるようになればと思っています。またベルソムラも同様機序で長期処方可能となり、高齢者にはファースト チョイスで処方しています。
写真は逗子在住山内明徳様撮影
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