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【在宅でみる大腿骨近位部骨折】手術できない高齢者をどう支えるか

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 10 時間前
  • 読了時間: 3分

高齢化の進行に伴い、大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ)を受傷される高齢者が年々増加しています。

通常であれば手術が推奨される骨折ですが、

  • 全身状態が悪い

  • すでに歩行困難

  • 認知症が進行し、手術後の脱臼肢位保持が難しい

といった理由から、「手術適応なし」と判断され、手術を行わず自宅や施設に戻られる方も少なくありません。

今後の超高齢化社会では、こうしたケースがさらに増えていくと考えられます。最近当クリニックにても手術適応なしとの判断される症例を続けて経験したので、これに関しては少し述べていきます。


手術できない大腿骨近位部骨折をどうみるか?

今回は、手術を行わない方への在宅や施設での支援のポイントをまとめてみました。(※これから手術を受ける方には当てはまらない内容です)

骨折のタイプで対応が変わる

大腿骨近位部骨折は、骨折する場所によって大きく2つに分類され、保存療法時の方針も異なります。

① 大腿骨頸部骨折

→ 骨の「頸部(けいぶ)」と呼ばれる細い部分が折れる

  • この部位は自然にくっつくことは非常に難しく偽関節(骨がつながらない状態)になりやすいことで有名です。

  • 「動かさないほうが治る」とは限らず、荷重制限は基本不要ですが、実際には痛みで体重をかけられない方がほとんどです。

② 大腿骨転子部骨折

→ 骨の「転子部(てんしぶ)」という太い部分が折れる

  • 3か月程度で骨癒合(くっつく)することが多い骨折です。

  • ただし3か月も安静にすると廃用が進み、歩行再開は困難になる方がほとんどです。

実際の在宅・施設での対応ポイント

◉ 痛みとADL

  • 骨折部が安定するまでは約3週間ほどかかります。

  • 痛みは徐々に落ち着いてきますが、完全に痛みを取り除くことは困難です。

  • 最終的には車いすレベルのADLとなる方が多く、ベッド上での介護が基本になります。

◉ 合併症への注意

  1. 褥瘡(床ずれ):長期臥床によりリスクが上がります。


    高機能エアマットの使用を推奨

  2. 誤嚥性肺炎:ベッド上で食事を摂る際に要注意


    ギャッチアップして食事介助、むせの確認

  3. 深部静脈血栓症(DVT):動かないことが原因に


    足関節の運動早期離床で予防します

◉ よくある質問「足、動かしていいの?」

「痛みの範囲内で動かしてOK」です。

  • おむつ交換時は愛護的に下肢を操作

  • 痛みが許せば車いすへの離床も積極的に

  • 「動かさない」ことのリスクの方が大きいため、不必要な安静は避けるべきです

おわりに

手術をしない大腿骨近位部骨折は、医療・介護チームでの包括的な支援が不可欠です。在宅や施設でのケアにおいて、「できること」「してはいけないこと」を整理しながら、患者さんのQOLと安全を両立する対応が求められます。

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