在宅医療で活用される肺エコーによる肺炎診断
- 賢一 内田
- 19 時間前
- 読了時間: 3分

在宅医療の現場では、X線やCTといった画像診断がすぐに使えない場面も多くあります。そんなとき、**肺エコー(Lung Ultrasound/LUS)**が大きな力を発揮します。特に、通院困難な高齢者や寝たきりの方において、肺炎による呼吸苦や発熱の鑑別に有効です。
🔍 肺エコー検査の実施方法
🔸 プローブの種類と使い分け
凸型(コンベックス)プローブ:肺全体の観察に向いており、在宅では最も汎用性が高い
リニアプローブ:胸膜下や浅部の観察に適しており、胸水や胸膜炎の評価にも有効
🔸 プローブを当てる部位
前胸部・側胸部・背部を左右それぞれ観察(合計6〜8ゾーンを目安)
背部の観察は特に重要:高齢者や寝たきり患者では背側に病変が出やすいため
🫁 肺炎を示唆するエコー所見
所見 | 解説 |
Bラインの多発 | 肺胞の水分貯留を示唆。間質性肺水腫や肺炎の初期に出現 |
コンソリデーション(肺実質化) | 肺胞内に浸潤物が溜まり、エコー上で実質臓器のように見える典型的所見 |
エアブロンコグラム(空気気管支像) | コンソリデーション内に空気の通った気管支像が見えると、肺炎を強く示唆 |
胸水貯留 | 細菌性肺炎に合併することが多く、膿胸の可能性も含めた評価が必要 |
🔸 「Bラインの多発」とは?

Bラインは、胸膜から垂直に走る高輝度のアーチファクトで、エコー画面の下まで伸びる線状の像です。
✅ 出現する主な病態:
間質性肺水腫(心不全など)
肺炎(特に間質性肺炎や吸引性肺炎)
ARDS、肺線維症 など
✅ 所見の特徴:
正常肺:水平な「Aライン」が主体
異常肺:1視野に3本以上のBラインで「多発」と判断
分布:びまん性(心不全)/局所性(肺炎など)で異なる
✅ 肺エコーの利点と限界
メリット
放射線被ばくなし、非侵襲的で繰り返し評価可能
ベッドサイドで迅速に実施でき、在宅でも有用
特に背側病変に対する感度はX線より高いとされる
デメリット
深部や肺尖部の病変は描出困難
COPD・肺気腫患者では描出が難しいことも
操者依存性が高く、経験が必要
🏠 在宅医療における実際の活用例
発熱・呼吸苦・CRP上昇 → 背部にコンソリデーションを確認 → 抗菌薬治療へ
吸引性肺炎疑いの高齢者 → 背部にBライン増加+コンソリデーション → 在宅で抗菌薬導入
📚 まとめと補足
LUSは近年「X線より高感度」とする報告もあり、在宅肺炎診断の第一選択肢になりつつあります。
ただし、最終的な診断は、症状・バイタル・採血などとの統合的判断が不可欠です。在宅医療に関する情報は、**YouTubeチャンネル「内田賢一 – YouTube」**でも発信しています。ぜひご覧ください☟
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