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内田

更新日:2023年3月28日


  1. 内田院長は、在宅医療をどの様なものにしていくお考えでしょうか


内田院長)現在の医療費の多くは高齢者へ注がれています。そして高齢者の方たちは病気に打ち克ちという状態でない方も多くいます。もう少しストレートに表現するならば病気と共に生きていくという状態になっています。現在の身体の状態に寄り添い、何か起こったら出来る範囲の治療をすることを希望される方多いと考えます。癌の治療において治癒的な標準治療は行わないが、疼痛などの無い状態、苦痛の無い状態を自宅にて実現する。超高齢者では食事が食べられない、便秘を繰り返す、夜間になると不穏になる、圧迫骨折後の腰痛がよくならない等の様々なトラブルが起こります。こうした病態の患者さんが病院へ行く、搬送されることは病院へ行く患者さんと家族、搬送を担う救急隊の方々、病院で診て頂く医師を含めた様々なスタッフの方々、誰もが疲弊してしまいます。こうした時に患者さんの状態を理解している在宅医療医が患者さんの診療に自宅や施設へ伺うことにより、少なくとも無駄な疲弊は無くなると感じております。


  1. 内田院長の在宅医療との出会いはどの様なものでしょうか

自身は脳外科医として働いておりました。脳外科医としての日々はとてもやりがいを感じる日々で全く不満の無いものでした。しかし東日本の震災の後宮城で在宅診療を始めた診療所に夏休み全部を使って無償でお手伝いに行った経験で、病院勤務の矛盾も感じました。その時に出会った田上先生(やまと在宅診療所理事長)に10年後に僕も在宅医療を始めますと言って、今に至る感じです。


  1. 病院勤務から在宅医療を始めるにあたって何か違いはありましたか

脳外科医は手術偏重の科に見えますが、日本の脳外科医は欧米の様に手術以外は全て他科に任せることはないので、病院に居ながら医療面では在宅医療を何も変わらないという感じでした。実際、在宅医療を開始して自分でも向いているなぁと思いました(笑)。脳卒中で運ばれて来る患者さんは、様々な病気を併存しています。他科に相談してもこんな感じで治療お願いします、ということが多く、脳卒中診療と併行して沢山の病気を診させて頂きました。例えば脳梗塞の治療しながら自分で抗ガン剤やモルヒネの調整をしたり、重症心不全の管理をしたり、膝の関節に注射をしたりの日々でした。それこそ、若い頃は他科の先生の指導下ですが、胃瘻増設、膀胱瘻増設や手術時に一時的なペースメーカーの留置も自分でしていました。人生に無駄は無いと実感する日々です(笑)

  1. 今後のさくら在宅クリニックの未来図を教えて下さい

全ての判断基準は患者さん第一です。これにより判断基準は極めて明確です。その基準下に

自宅で暮らし、自分らしい人生をLiving at home, living my own life.

を実現できたらと考えています。これは抽象論ですが具体的には、現在当チームの仲間は消化器外科、消化器内科、循環器内科、整形外科、脳外科という臨床的バックボーンを持っています。自宅で行う治療においても入院治療と遜色ない在宅入院という造語で表現していますが、病院治療の劣化版でない医療を提供できるよう努力していきます。もちろん治療が必要と判断すれば速やかに連携医療機関と連携します。そして最も重要なことは医療だけでなく生活全てを支える気持ちがマストだと考えます。例えば病院で幻覚や妄想などの症状が出現した場合は、鎮静などの投薬を行うかと思います。しかし例えば『お母さん背広を早く準備して、切符の手配も』と会社へ行く準備をしたり『今日はいいマグロがはいりました』と元寿司職人さんが寿司をエアーで握り始めたりすることを自宅で診ている限り鎮静する必要はあまり感じません。自分の残り時間を無意識に自覚する中で、人生の輝いていた時間にフィードバックする瞬間は、むしろ人が死の恐怖に打ち克つ本能とも感じています。そしてこうした経験は私自身においても『患者さんの生活を知る』『患者さんの過去まで知りに行く』ということが病院勤務医時には出来ていなかった。単純に臓器を修理する職人的な価値に重きを置いていた臨床医としてスタンスを改めなければ感じました。

さらに在宅医療の患者さんは様々な悩みを抱えています。お金のこと、家族との関係、病気への不安など挙げたらきりがありません。これに対応できるよう患者さんとの向き合いは徹底的な非効率化を目指します。可能な限り患者さんとの対話を重視する医療を心がけています。そして自身で大切と思う価値は、『可能な限り患者さんのわがままを実現しよう』という気持ちです。在宅医療を行う医師、スタッフの最高のギャランティは患者さんからの『ありがとう』という言葉だと思っています。そして、この言葉を頂くには、私達も沢山の努力が必要です。私達の都合を押し付けるのでなく、患者さんの想いを実現する圧倒的なプロであることを常に自覚するようにしています。



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