超高齢化社会において、転倒・骨折などは非常に頭の痛い問題です。病院などでは、抑制同意書などを入院時に取得し夜間帯などはベッドから自身で動けなくなるようにします。実際の現場は、非人道的な印象を受けますが、他に方法が無いのが実情です。もし、転倒などで急性硬膜下血腫など、命にかかわる受傷をされた場合、管理上は『絶対に転倒させないよう、注意して下さい』となるのはやむを得ないと感じます。但し、こうした転倒の原因として投薬が原因となる場合もあります。具体的にはベンゾジアゼピン系の薬剤は、こうした転倒などを引き起こすリスクがあります。なので、不眠時などに非ベンゾジアゼピン系が選択され場合が多いのですが、非ベンゾジアゼピン系にも問題があります。
超短時間作用型と呼ばれているように非ベンゾジアゼピン系の半減期は短く、かくいう私も研修医の頃は強烈な不眠症にて使用したこと多々あります。ただし、こうした半減期も高齢者では半減しない場合があります。具体的には、高齢者は血漿タンパク質濃度低下や腎機能低下などによって、血中濃度が上がりやすくなっています。
添付文書には、ゾルピデムの半減期は高齢者で2.2倍になったと記載されています。
また、薬理的に筋弛緩作用が少ないことが期待されていますが、ゾルピデムで大腿骨近位部骨折が2.23倍、怪我のリスクが1.89倍に増えたという報告があり、筋弛緩作用も実際にはあるのでしょう。実際、私自身も内服して筋弛緩作用を感じました。つまり、非ベンゾジアゼピンは、ベンゾジアゼピンのようなものと考えた方が良さそうで、ベンゾジアゼピンの代わりになるものではありません。
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