高齢者を中心に診療していると、高齢者に多い疾患であるPMR(リウマチ性多発筋痛症)によく遭遇します。
第95回日本整形外科学会学術総会において、「リウマチ性多発筋痛症の診断と治療 杉原 毅彦先生 聖マリアンナ医科大学リウマチ膠原病アレルギー内科」という教育研修講演がありましたので、忘備録としてまとめてみました。
診断
PMRは肩関節と股関節の関節外の炎症を特徴とする関節疾患
疫学
通常50歳以上、平均発症年齢70-75歳
女性の頻度は50-70%
20%前後で巨細胞性動脈炎を合併
肩関節病変は必須で、股関節病変は50-70%程度
肩、股関節以外に末梢関節症状を認めるケースが20-40%
PMRに診断基準はないが、参考となるのは、2012 欧州リウマチ学会暫定分類基準 必須項目 1. 両肩の関節症状があること 2. 血液検査で炎症反応が認められること 3. 年齢50歳以上 分類項目 1. 45分をこえる朝のこわばり(2点) 2. 臀部痛あるいは股関節の可動域制限(1点) 3. リウマトイド因子陰性、抗CCP抗体陰性(2点) 4. 肩関節、股関節以外の関節病変を伴わない(1点) 4点以上をPMRと分類 (ステロイドへの治療反応性は必ずしも良いわけではなく、項目から除外された)
画像上(PET/CT、MRI)、両肩関節の上腕二頭筋の腱鞘滑膜炎、三角筋下滑液包炎、肩甲上腕関節滑膜炎、股関節では大転子部・坐骨結節・恥骨結合・寛骨臼に関節包外の炎症病変、頚椎・腰椎の棘突起間の滑液包炎を特徴とする。
非PMRとの鑑別能に優れた特徴的病変…胸鎖関節、腰椎の棘突起間の滑液包炎、股関節、坐骨結節 Rheumatology 2022;61:1072-1082
二頭筋付着部、棘上筋腱、肩甲下筋腱、膝関節靭帯付着部、膝窩筋腱付着部のエコー所見がPMRの鑑別に有用 Rheumatology 2022;61:1185-1194 →肩関節・股関節周囲以外にも、様々な部位に炎症を起こすことが分かります。
PMRと考えて評価中に、末梢関節の滑膜炎が出現してRA(関節リウマチ)であった症例もよくある。 高齢発症RAの25%程度にPMRの症状で発症するケースがある。 高齢発症RAの特徴(急性発症、抗CCP抗体陰性、ESR高値)は70歳前後の発症から増加 末梢関節症状のあるPMRの50%は高齢発症RA →PMRと高齢発症RAの鑑別は難しい。末梢関節症状のあるPMRはRAも考慮する。
治療
プレドニゾロン初期投与量は目安として0.3mg/kg(日本人では体重50kgとすると15mgで開始が良いか)
2015 EULAR Recommendations プレドニゾロン減量プロトコール
PMRに対するステロイド療法の反応性3週間後の寛解達成率55%→思ったほど治療反応性は高くない。3週間後に症状の改善を認めない場合は鑑別診断を再考(巨細胞性動脈炎、関節リウマチ、悪性腫瘍関連の筋骨格症状)
悪性腫瘍の頻度はPMRと健常者では変わらないが、PMR診断後数カ月はPMR様症状を示す悪性腫瘍合併の鑑別診断に留意する。
巨細胞性動脈炎(GCA)の主な特徴・高齢者・頭痛・側頭動脈の拡張、痛み・咀嚼により痛みが生じる、顎が疲れる(顎跛行)・視力低下、失明・肩、股関節の関節痛、強張り、筋痛・発熱、倦怠感
日本人初発GCAの診断時、PMRを41.7%に合併
PMRは再発が多い 再発率31〜55%ステロイドの減量速度が速いと再発しやすい、CRP、IL-6上昇の持続例が再発しやすい
再発した場合、MTX、IL-6阻害薬(アクテムラ)が有効だが保険未承認
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