高齢者の排尿障害と尿路感染の因果関係~高齢者の尿路感染リスクと適切な治療法
- 賢一 内田
- 3月17日
- 読了時間: 4分
高齢者における排尿障害(排尿困難、尿閉、頻尿、残尿感など)と尿路感染症(尿道炎、膀胱炎、腎盂腎炎など)は、密接な因果関係があります。加齢に伴い、膀胱や尿道の機能が低下し、排尿トラブルが増えることで、尿路感染症のリスクが高まります。本記事では、排尿障害と尿路感染の関係について詳しく解説します。
尿路感染症とは?
尿路感染症とは、尿路に細菌(主に大腸菌など)が侵入し、感染・増殖して炎症を起こす病気の総称です。感染部位に応じて、以下のように分類されます。
1. 上部尿路感染症(腎盂腎炎)
腎臓の「腎盂」で起こる腎盂腎炎が代表的です。細菌が尿道口から侵入し、膀胱、尿管を経て腎臓に達することで発症します。膀胱炎よりも重症化しやすく、高熱や腰痛、倦怠感を伴うことが多く、入院治療が必要になるケースもあります。
2. 下部尿路感染症(膀胱炎・尿道炎・前立腺炎)
膀胱や尿道での感染が多くみられます。尿道口から細菌が入り、膀胱で増殖して炎症を起こします。頻尿、排尿時の痛み、残尿感などの症状が特徴です。
高齢者の排尿障害と尿路感染の因果関係
1. 排尿障害が尿路感染を引き起こすメカニズム
排尿障害があると、尿の流れが滞りやすくなり、細菌が繁殖しやすくなります。
残尿の増加:膀胱に尿が残ることで細菌が繁殖しやすくなり、膀胱炎や腎盂腎炎の原因となる。
排尿回数の減少:排尿が少ないと、尿とともに排出されるはずの細菌が体内に留まり、感染リスクが高まる。
尿の停滞と逆流:前立腺肥大症や神経因性膀胱では、尿がスムーズに排出されず、腎臓へ逆流することで腎盂腎炎の原因となる。
カテーテル使用:長期間のカテーテル留置は細菌感染のリスクを高める。
2. 尿路感染が排尿障害を引き起こすメカニズム
尿路感染が排尿機能に影響を与えることもあります。
尿道狭窄:慢性的な尿道炎が続くと尿道が狭くなり、排尿困難や残尿増加の原因となる。
膀胱過敏:膀胱炎が進行すると、膀胱粘膜が炎症を起こし、頻尿や尿意切迫感が増す。
腎盂腎炎による排尿機能の低下:腎盂腎炎が進行すると、腎機能だけでなく排尿機能にも影響を与え、排尿困難や尿意減退を引き起こすことがある。
高齢者に多い排尿障害と尿路感染の関連性
病態 | 排尿障害が原因で起こる尿路感染 | 尿路感染が原因で起こる排尿障害 |
前立腺肥大症 | 残尿増加 → 膀胱炎・腎盂腎炎 | なし(直接的な影響は少ない) |
神経因性膀胱 | 自排尿困難 → 尿路感染リスク増加 | 膀胱炎 → 排尿コントロール障害 |
カテーテル留置 | 細菌侵入 → 尿路感染 | なし(むしろ排尿補助目的) |
尿道狭窄 | 残尿増加 → 尿路感染 | 慢性尿道炎 → 狭窄進行 |
膀胱炎 | なし(逆の因果関係) | 頻尿・尿意切迫感 |
予防と対策
1. 適切な排尿管理
残尿のチェック:超音波検査で残尿量を確認し、必要ならば導尿を行う。
膀胱訓練:適切なタイミングで排尿する習慣をつける。
2. 水分摂取の工夫
適度な水分摂取を維持することで、尿の流れを良くし、細菌の繁殖を防ぐ。
3. 感染予防
カテーテル管理:可能な限り短期間で使用し、清潔な環境を保つ。
排尿後の清潔保持:特に女性は尿道が短いため、トイレ後の拭き方(前から後ろへ)に注意。
4. 基礎疾患の管理
前立腺肥大症の治療:α1ブロッカーや5α還元酵素阻害薬の使用。
糖尿病の管理:糖尿病は神経因性膀胱の原因となり、尿路感染のリスクを高める。
まとめ
排尿障害は尿路感染を引き起こしやすい
残尿の増加、排尿回数の減少、カテーテル使用がリスク因子。
尿路感染も排尿障害を悪化させる可能性がある
尿道狭窄、膀胱炎による過敏性が原因となる。
予防策としては、適切な排尿管理、感染予防、水分摂取が重要。
高齢者において、排尿障害と尿路感染は互いに影響を及ぼし合うため、一方を放置するともう一方が悪化する可能性があります。早期の診断と適切な治療が、快適な排尿習慣を維持するために不可欠です。
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