冬場は高齢者が入浴中に突然死する事故が多いと言われています。
今回はそのメカニズムを解説し、そうならないためにはどうしたら良いのかについて解説します。
脱衣所や浴室が寒くなっていると、血管が収縮し、血圧が上昇します。
→お風呂に入り、体が温まると、今度は血管が広がり血圧が低下します。
→急に血圧が低下することで、脳に血液が行きづらくなり、失神を起こします(高齢者は血圧の調節機能がうまく働きません)。
→浴槽内で意識を失うことで溺死してしまいます。
つまり、入浴によって、血圧がジェットコースターのように上がったり下がったり、大きく変動することが原因であり、血圧の変動を少なくすることが対策です。
よく言われている対策は、以下です。
・入浴前に脱衣所や浴室を温めておく・お湯を熱くしない(41℃以下)・長湯をしない(10分以内)・食事直後、飲酒時の入浴を控える(血圧が下がっているため)・夕食前、日没前に入浴する(気温が下がる前に)・浴槽から急に立ち上がらない(血圧が急に下がるため)・入浴時は頻回に見回りに行く
医学生時代に、近くの温泉の共同浴場にたまに行っていたのですが、そこのお湯の温度は45~47℃くらいありました。入浴すると、身動きができず(体の表面のお湯は体温によって冷やされるので動かなければ熱くない)、一瞬で湯船から上がったものでした。
そこに来ている地元の高齢者たちは、平然とした顔で入浴しており、外部の人が来て水で薄めようものなら、いやな顔をされたものでした。そのため、こちらもやせ我慢して入らなければなりませんでした。
それはさておき、高齢者は熱いお風呂が大好きです。「熱い湯に入らないでください」「長湯はしないでください」と言ったとしても、「ぬるい湯は入った気がしない」などと言われてしまうでしょう。
なぜ、熱いお湯に入りたがるかというと、体が冷えているからです。体を芯から温めようとするために、熱い湯に長く入ろうとします。
この対策としては、室内全体の温度を上げて(暖かい家で暮らす)、そもそも体を冷やさないようにすることが挙げられます。しかし、高齢者の中には暖房をあまり使いたがらない方もいます。
そういった方には、せめて脱衣所に暖房器具を置いて温めておくと良いでしょう。
入浴が難しくなっている方は、自宅の浴槽にこだわらず、訪問入浴をお勧めします。訪問入浴であれば、入浴前に血圧を測るなどで体調をチェックしますし、スタッフの目もあるので、入浴の事故を極力減らすことができます。
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