高齢者の「転倒予防」、実は“歩く”だけでは危険なことも?
- 賢一 内田
- 7月3日
- 読了時間: 2分

転倒を防ぐには、ただ「歩けばいい」わけではありません。
高齢者の転倒は、寝たきりや骨折の原因としてよく知られています。そこで今回は、**「運動介入によって転倒はどれだけ防げるのか」**を示した注目の論文をご紹介します。
出典Sherrington C, et al. J Am Geriatr Soc. 2008「転倒予防に効果的な運動は何か?」を検証した、信頼性の高いRCTのメタアナリシス(複数の研究を統合した分析)です。
📊 運動による転倒リスクの低下率は?
この研究では、運動により転倒が平均で17%減少することが示されました。ただし、その効果は「どんな運動をするか」で大きく変わることがわかっています。
🧩 どの運動が一番効果的?
以下の表は、バランス能力の高低別に、4つの異なる運動プログラムが転倒予防に与える影響(リスク比:RR)を示しています。
🏅 最も効果が高かったのは…
✅ 高強度かつウォーキングを含まないバランス訓練(50時間以上)→ RR = 0.58(転倒リスクが42%減)
バランス訓練が転倒予防に非常に効果的であることが分かります。
⚠️ 逆に「危険」なプログラムも…
❌ 低強度の運動にウォーキングだけを組み合わせた場合→ RR = 1.20(転倒リスクがむしろ20%増)
つまり、バランス能力が十分でない高齢者に対し、準備もなく「とにかく歩け」という指導は、かえって転倒を増やす可能性があります。
📝 まとめ
高齢者の転倒予防には、バランス訓練が重要。
特に効果的なのは、高強度・非ウォーキング型のプログラム。
安易な「ウォーキング推奨」は、かえって危険な場合がある。
「元気になってほしい」と思う気持ちはとても大切ですが、運動の“質”を見極めて、安全で効果的なプログラムを提案することが重要です。
▶︎ 今後も在宅医療や高齢者ケアに役立つ情報を発信していきます!
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