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高齢者の「排尿障害」と「尿路感染症」の深い関係

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 5月2日
  • 読了時間: 3分

~早めの対応で、快適な排尿と感染予防を~

高齢者に多く見られる「排尿トラブル(排尿困難・尿閉・頻尿・残尿感など)」と「尿路感染症(膀胱炎・腎盂腎炎・尿道炎など)」には、深い因果関係があります。加齢によって膀胱や尿道の機能が低下すると、排尿障害が増え、結果として感染リスクも高まります。

この記事では、なぜ排尿障害が感染を引き起こすのか、またその逆もあるのか? という視点でわかりやすく解説していきます。

尿路感染症とは?

尿路感染症とは、尿道から細菌(多くは大腸菌など)が侵入し、尿の通り道である「尿路」に炎症を起こす病気です。感染する部位によって次のように分類されます。

① 上部尿路感染症(腎盂腎炎)

腎臓の中の「腎盂」で起こる炎症。高熱、腰痛、倦怠感などを伴い、入院が必要になることもあります。

② 下部尿路感染症(膀胱炎・尿道炎・前立腺炎など)

頻尿、排尿痛、残尿感が主な症状で、多くの高齢者にみられます。

排尿障害が尿路感染を招くしくみ

  • 残尿の増加:尿が膀胱内に残ることで、細菌が繁殖しやすくなります。

  • 排尿回数の減少:尿とともに細菌を排出する機会が減るため、感染リスクが高まります。

  • 尿の逆流:前立腺肥大や神経因性膀胱では、尿が腎臓に逆流し、腎盂腎炎の原因に。

  • カテーテルの長期使用:異物であるカテーテルを通じて細菌が入り込みやすくなります。

尿路感染が排尿障害を悪化させることも

  • 慢性尿道炎 → 尿道狭窄:尿の通り道が狭くなり、排尿困難を引き起こします。

  • 膀胱過敏 → 頻尿・尿意切迫感

  • 腎盂腎炎 → 排尿機能の低下:重症化すると腎臓だけでなく排尿そのものにも支障が出ることがあります。

高齢者に多いケースとその関係性

病態

排尿障害 → 尿路感染の例

尿路感染 → 排尿障害の例

前立腺肥大症

残尿増加 → 膀胱炎・腎盂腎炎

ー(直接の因果は少ない)

神経因性膀胱

自排尿困難 → 感染リスク上昇

膀胱炎 → 排尿コントロール障害

カテーテル留置

長期留置 → 細菌侵入 → 感染

ー(排尿補助として使用)

尿道狭窄

尿の停滞 → 膀胱炎・腎盂腎炎

慢性尿道炎が原因で狭窄が進行する

膀胱炎

頻尿・尿意切迫感が出現

予防と対策

✅ 排尿管理

  • 残尿量を定期的にチェック

  • 膀胱訓練で排尿習慣を整える

✅ 水分摂取

  • 脱水を防ぎ、尿の流れをスムーズに保つ

✅ 感染対策

  • カテーテル管理は清潔・短期間を心がける

  • 排尿後の清潔保持(特に女性は前から後ろへ拭く)

✅ 基礎疾患の治療

  • 前立腺肥大:薬物治療(α1ブロッカーなど)

  • 糖尿病:神経因性膀胱の予防にもつながる

まとめ

  • 排尿障害は尿路感染症のリスク因子

  • 尿路感染は排尿機能そのものに影響を与えることも。

  • どちらかを放置すると、もう一方も悪化する可能性があります。

高齢者においては、適切な排尿管理と感染予防が健康維持の鍵です。早期の対応で、安心した日常生活を支えていきましょう。

📺 在宅医療での排尿・感染管理については、YouTubeでも解説しています!内田賢一 - YouTubeチャンネルはこちら

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