高齢者に多い「偽痛風」ってどんな病気?
- 賢一 内田
- 6月2日
- 読了時間: 3分

皆さんは「偽痛風(ぎつうふう)」という病気をご存じでしょうか?
これは、「ピロリン酸カルシウム結晶」が関節内に沈着して起こる、結晶性関節炎の一種です。名前に“痛風”とありますが、尿酸が原因の本当の痛風とは別の病気です。
偽痛風は高齢者に多い疾患です
偽痛風の発症は、60歳以上の高齢者がほとんど。そのため、高齢者が発熱したときの鑑別診断として、ぜひ覚えておいていただきたい疾患です。
私が病院勤務していた頃は、入院中の患者さんが突然関節の腫れと熱を伴って発熱したとき、よく偽痛風の可能性を疑いました。
というのも、偽痛風は「体にストレスがかかったとき」に起きやすいんです。たとえば、手術のあと、肺炎のあと、骨折などのけがのあと……といった場面です。
膝が腫れて熱っぽい?それ、偽痛風かもしれません
偽痛風は「単関節炎(ひとつの関節に起きる炎症)」として現れることが多く、膝関節に最も多くみられます。そのほか、手首・足首・肩・肘などにも起こることがあります。
診察では、次のようなことをチェックします:
関節の熱感(熱をもっているか)
腫脹(腫れているか)
圧痛・他動時痛(押して痛い・動かすと痛い)
左右差(関節は左右にあるため比較が有効)
熱は高くても、意外と元気なことが多い?
偽痛風では、39℃近い発熱や**CRPの高度上昇(20〜30台)**を認めることもありますが、全身状態は比較的良好という特徴があります。
また、繰り返し再発するケースも多いため、「以前にも関節が腫れて熱が出たことがあるか?」という問診がとても大切です。ご本人が覚えていなくても、ご家族や過去のカルテからの情報が診断のヒントになります。
確定診断には「関節穿刺(かんせつせんし)」が必要です
最終的な診断は、腫れている関節に注射針を刺して関節液を抜き、検査に提出します。
関節液を顕微鏡で見て「ピロリン酸カルシウム結晶」があるか確認
同時に細菌培養検査も行い、「化膿性関節炎」との鑑別をします
偽痛風の関節液は、やや濁った黄色をしています。ちなみに、関節穿刺による感染のリスクは1万回に4回程度とされ、極めてまれです。
治療はNSAIDs(消炎鎮痛薬)が基本です
偽痛風の治療は、NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)を1週間ほど内服すれば、ほとんどの場合は軽快します。
また、関節内にステロイドを注射する治療も非常に効果的ですが、これは次のような条件をクリアしている必要があります:
化膿性関節炎でないと自信を持って否定できる
将来的にその関節を人工関節に置換する予定がない
(ステロイド注射は、後の手術での感染リスクを高める可能性があるためです)
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偽痛風のような急な発熱や関節の痛みも、在宅診療の現場でよく遭遇する問題の一つです。
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