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認知症は治せるか~認知症治療の羅針盤11

  • 4 日前
  • 読了時間: 4分

MCI-AD(Alzheimer病による軽度認知障害)の典型例から学ぶ症候・診断・最新治療

軽度認知障害(MCI)は認知機能正常と認知症との間に位置づけられ、何らかの認知機能障害はあるものの日常生活は何とか送れている状態である。Alzheimer病を背景とするMCI(MCI-AD)は2023年より抗アミロイドβ抗体医薬の保険適用対象となり、早期診断・バイオマーカーの活用がますます重要となっている。

現病歴
現病歴

70歳代前半の女性(高卒)。5年前に他院で海馬の萎縮を指摘。2〜3年前からもの忘れを自覚。携帯電話をどこに置いたか忘れて半日探すことがある。得意先に「初めまして」と挨拶したところ「何度もお会いしています」と返された。処方薬の内服を時々忘れる。買い物では事前に冷蔵庫の中身をチェックしメモをして対処。1週間前、長年通っている経路を一時的に思い出せなくなり初診。日常の家事・職場業務は概ね継続できていた(COVID-19の影響でスポーツクラブ・会食はほとんど中止)。

初診時現症・鑑別

朗らかで疎通良好。MMSE 25点(場所の見当識−1、シリアル7−2、遅延再生−2)。GDS 5点。軽度の気力・意欲低下あり。幻覚・妄想・性格変化なし。神経所見なし。従来の生活に若干の支障を認めるものの工夫で対処できており、MCIと判断。健忘症状が目立ち神経所見がないことからAlzheimer病理によるMCI(MCI-AD)を想定。うつ病などの精神疾患は否定的と考えた。

▶ 主な認知機能検査値
▶ 主な認知機能検査値
▶ MCIのコア定義(ICD-11 / DSM-5 / NIA-AAの共通部分)
▶ MCIのコア定義(ICD-11 / DSM-5 / NIA-AAの共通部分)
  • 1つ以上の認知ドメインの障害(年齢相応以上、あるいは従前のレベルより低下)

  • 認知機能の障害は本人・情報提供者からの報告、または熟練した臨床医の観察および客観的な認知機能検査により裏付けられる

  • 機能レベルが従前より低下

  • 日常生活や仕事などに深刻な影響はない(← ここがADとの違い)

▶ その後の経過

 

初診後まもなく

健忘が徐々に悪化。前日の話を「聞いていない」と言うことが増えた。リバスチグミン9mgを処方(貼り忘れ多く後にドネペジルへ変更→軟便で中止、現在投薬なし経過観察)。

 

約1年後

家事を家族に頼ることが増え、料理もあまりしなくなった。活動性が落ちアパシーが目立ってきた。この時点で初期の認知症に移行したと判断。

 

後日

余暇活動や運動を推奨し、家族の支援のもとスポーツクラブ通いや旅行に行くようになった。アミロイドPET陽性が確認された。MCI-ADの特徴と検査法

Alzheimer型認知症の臨床診断では、エピソード記憶(健忘)の障害が最も重要。日常臨床ではMMSEやHDS-Rの「遅延再生」を健忘の目安とすることが多い。しかしMMSEやHDS-Rの遅延再生では健忘がはっきりしない場合も、WMS-R 論理的記憶Ⅱで検出できることがある。MoCAはMMSEよりもMCI検出感度・特異度が優れているとの報告があり、MMSEの代わりに用いることも考慮してよい(MCIのカットオフ 23未満〜25未満)。

MCI-ADを診断する意義 — アミロイド仮説と治療ターゲット

アミロイド仮説において、アミロイドβの脳内蓄積は認知機能障害が出現する約20年も前から始まるといわれる。近年のAlzheimer型認知症の治療ターゲットは中等度以上の認知症よりも初期の認知症やMCIに移っており、2023年より認可された抗アミロイドβ抗体医薬もその流れに沿っている。2018年のNIA-AAリサーチフレームワークでは、研究においてはA(アミロイド)、T(タウ)、N(神経変性)の各バイオマーカーの有無によりAlzheimer病理をカテゴライズして診断することが提案された(ATN分類)。

抗アミロイドβ抗体医薬と投与基準

レカネマブ(2023年12月保険適用)とドナネマブ(2024年11月保険適用)が、Alzheimer病によるMCI(および軽度認知症)を対象として臨床導入が進んでいる。薬物療法以外では、喫煙・抑うつ・社会的孤立・運動不足・大気汚染・糖尿病などの潜在的な修正可能な危険因子の解消に努めるよう生活指導を行う。

バイオマーカーについて
バイオマーカーについて

バイオマーカーとは病態を反映する測定可能な指標全般を指す。現時点で有用性が確立し臨床現場で用いられているのはAlzheimer病(AD)の脳脊髄液バイオマーカーに限られる。AD患者の脳脊髄液中ではAβ42が低下し、リン酸化tau(p-tau)・総tau(t-tau)濃度が上昇している。Aβ42濃度よりもAβ42/Aβ40比を用いることで精度が改善される。本邦ではp-tau181の測定が2012年より保険適用となっている。

主なバイオマーカー(ADの脳脊髄液/血液)

近年は血液バイオマーカーの有用性も多数報告されており、米国ではFDAから血漿p-tau217/Aβ42比が承認され使用開始されている。日本でも早期の臨床での実用化が期待される。また2025年よりエクルーシス®を用いたp-tau/Aβ42比も保険適用となった。p-tau217はADの診断において最も高い感度・特異度を達成できると報告されている。
近年は血液バイオマーカーの有用性も多数報告されており、米国ではFDAから血漿p-tau217/Aβ42比が承認され使用開始されている。日本でも早期の臨床での実用化が期待される。また2025年よりエクルーシス®を用いたp-tau/Aβ42比も保険適用となった。p-tau217はADの診断において最も高い感度・特異度を達成できると報告されている。

TIPS — 臨床のポイント

MCIは、何らかの認知機能障害がありながらも、日常生活に深刻な支障は認めない状態を指す。

Alzheimer病によるMCIでは健忘(近時記憶の障害)が典型的である。MMSEで検出できない場合はWMS-R 論理的記憶ⅡやMoCAの活用を検討する。

Alzheimer病を背景とするMCI(MCI-AD)は抗アミロイドβ抗体医薬(レカネマブ・ドナネマブ)による治療の適応となる。

新規抗体治療を考慮する場合は、MCI-ADの診断にはアミロイドバイオマーカー(アミロイドPETまたは脳脊髄液・血液バイオマーカー)を用いる。#MCI-AD#軽度認知障害#アミロイドβ#タウ#抗アミロイドβ抗体#レカネマブ#ドナネマブ#バイオマーカー#アミロイドPET#脳脊髄液検査#MoCA#海馬萎縮


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