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認知症は治せるか~認知症治療の羅針盤10~血管性認知症の典型例から学ぶ症候・診断・予防

  • 5月5日
  • 読了時間: 3分

血管性認知症の典型例から学ぶ症候・診断・予防

血管性認知症はAlzheimer病に次いで割合が高く、認知症の原因疾患のおよそ20〜30%を占める。高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙・心房細動などの危険因子に対する加療によって、ある程度予防できることが特徴的な認知症である。本稿では脳小血管病性認知症の典型症例をもとに症候・診断・分類・予防を解説する。

現病歴
現病歴

50歳代前半の男性。長期間にわたって高血圧を指摘されていたが治療を怠っていた。3年前から仕事上のミスが多くなり、2年前に退職を余儀なくされた。次第に生活管理が困難となり、数ヵ月間にわたり入浴せず、排泄の管理もできない状態となった。光熱費の支払いを忘れ、自宅のガスや電気が止まってしまった。近所の民生委員が本人を外来に連れてきて初診となった。

初診時現症

意欲の低下が認められ、問診には受動的に応じるのみで情報量のある会話には至らなかった。うつ気分は否定し、表情や行動からもうつ病は否定的。幻覚・妄想も認めなかった。明らかな神経症状は認めなかった。血圧は179/109 mmHgと高値。

検査所見

血液検査で血清クレアチニン値 2.0 mg/dL(腎硬化症)、高血圧性心肥大を認めた。HbA1c 5.7%(糖尿病なし)。MMSE 12点(意欲低下と注意障害が成績に影響)。頭部MRI FLAIR画像で多数のラクナ梗塞に加えて脳室周囲の高吸収域を認めた。MRAでは明らかな血管狭窄なし。

▶ NINDAS-AIREN診断基準による5つの臨床亜型
▶ NINDAS-AIREN診断基準による5つの臨床亜型
ADとの主な臨床的違い
ADとの主な臨床的違い

Alzheimer病と比較すると、脳血管性認知症では運動麻痺・偽球麻痺・排尿障害・脳血管性パーキンソニズム・病的反射・腱反射亢進などの神経症状を伴いやすい。認知機能障害では、記憶障害は必発ではなく、意欲の低下・注意障害・遂行機能障害・失語症や半側空間無視など様々な認知機能障害を呈する。Hachinskiの虚血スコアで鑑別の参考になる(合計7点以上で血管性認知症の可能性が高い)。

脳小血管病性認知症の特徴

脳小血管病は高血圧や高齢が関係する小血管領域の動脈硬化であり、穿通枝領域にラクナ梗塞・白質病変・脳出血・微小出血などを認める。症状は歩行障害・バランスの悪さ・排尿障害・意欲の低下・注意障害・思考速度の低下などであり、Alzheimer病に特徴的な記憶障害はそれほど特徴的ではない。画像所見はCTよりMRIの有用性が高く、微小出血はMRI T2*強調画像で検出できる。CADASIL・CARASILなど遺伝性血管性認知症との鑑別では白質病変の分布(側頭葉を含む)が参考になる。

予防と治療

主な危険因子

高血圧糖尿病脂質異常症喫煙心房細動

予防・治療の柱

中年期からの降圧療法体重管理身体運動禁煙心房細動への抗凝固療法抗血小板薬(慎重に)

脳卒中の再発予防は、すなわち血管性認知症の予防となる。高齢者への降圧療法は認知機能を悪化させるエビデンスはないことから行うことが一般的。脳小血管病性認知症は微小出血を伴うことが多いため、抗血小板薬の使用は血圧を厳重に管理した上で必要に応じて考慮する。


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