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認知症とパーキンソン病の関係性

認知症患者さんには、一定程度パーキンソン病に類似した症状見ることが多々ありました。とりわけ、これは外勤(医師は常勤先以外にも外勤として他院でパートタイムで働くことがあります)。この外勤先は、整形外科がメインの地域で信頼されている病院ですが、脳外科の外来には「ちょっと認知症を診て欲しい」という患者さんが多く来院されてました。そして、この認知症患者さんには前に書いたパーキンソン類縁疾患が非常に多いことを感じました。これらの患者さんの特徴として軽い脳梗塞が非常に多いことです。特に脳幹部の脳梗塞です。

人間の脳は、機能局在と言って、脳の決まった領域で、特定の決まった役割をしています。なので障害された脳の部位が判れば、症状も決まってきます。脳梗塞による障害によって出てくる症状を「巣症状」と言います。脳幹部の機能局在から生じる巣症状としては

①脳幹部には、意識を保つ中枢があります。脳幹網様体と呼ばれる部位から、視床近傍を通り大脳皮質全体に神経線維が分布し、この脳幹網様態からの刺激を受け大脳は覚醒・活動を行っていると言われています。脳幹網様態の働きが生理的に落ちると睡眠になり、病的な原因(たとえば脳梗塞など)で起こると意識障害となります。

このため遷延性意識障害(嗜眠・頃眠など)やせん妄が多いです。せん妄は興奮して陽性症状が主体のものが多かったです。

②脳幹部には、運動神経が非常に狭い所を脳から抹消へ集束して神経線維の束が通っています。これが障害されると、麻痺を起します。半身麻痺が多いので片麻痺と言います。主に下肢の麻痺が強く、軽い歩行障害がおこります。

③後は、眼球運動や瞳孔の大きさを調節する神経もあり、眼球運動の異常や瞳孔の異常が起こります。

①③の症状は、脳ヘルニアと呼ばれる状態で出てくることも多いです。大脳の大きな梗塞や出血などで、脳幹部が下方に圧迫されると脳ヘルニアを起こしてきます。脳ヘルニアを示す兆候が見られると、生命に危険がある状態と言えます。このような状態は、なかなか改善しません。早くとも数日かかる場合が多いです。

パーキンソン症状を引き起こす錐体外路系の中枢は、脳幹部や大脳基底核領域にあります。ここが障害されるとパーキンソン症状が出てくることがあります。

このように脳幹部の障害からいろいろな症状が出ます。

パーキンソン症状とせん妄はレビーの方で良く見る症状です。

パーキンソン症状と脳幹部脳梗塞が多いと言うのが、認知症を診療を始めてからの大きな疑問です。脳幹部脳梗塞は、せん妄や意識障害の原因の一つだと私は考えています。これはレビーの特徴でもあると考えています。

写真は逗子在住山内明徳様撮影

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