若年性アルツハイマーと向き合う日々~在宅療養の継続を支えた一つの薬~
- 賢一 内田
- 6月18日
- 読了時間: 4分

若年性アルツハイマー型認知症を患うAさん(70代前半・女性)は、数年前から記憶力や言語機能が低下し、徐々に日常生活への介助が必要となっていました。特にここ1年は会話も難しくなり、食事は全介助、歩行も手引きが必要という状態。加えて、ご家族が最も悩まされたのが「BPSD(行動・心理症状)」と呼ばれる、落ち着きのなさや突然の大声などの不穏な言動でした。
「もう在宅では無理かもしれない」
日によっては叫び声をあげたり、室内を徘徊する様子が見られ、ご高齢のお母様が一人で対応するには限界がある状況。施設入所も視野に入れたご相談が続く中、試みられたのが**レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)**の導入です。
劇的な変化
この薬を少量投与したところ、不穏な様子が徐々に落ち着き始め、ご本人に穏やかな笑顔が戻ってきました。ご家族からは「この前のような状態なら見きれないと思ったけど、今日みたいならまだ家で面倒見られそう」とのお言葉も。
日々の生活も安定
ご本人は、週4回のデイサービスにも通い、食事や排泄もコントロール良好。定期的な往診では「表情良し」「食欲あり」との評価が続いています。以前は便秘も悩みのタネでしたが、マグミットとラキソベロンの併用で改善。降圧薬も調整しながら、身体全体のバランスを保つよう努めています。
安心できる「今」を積み重ねていく
最新の診察では、「興奮や焦燥、被害的な発言などは見られず、症状は安定している」との評価。レキサルティの効果は明らかで、同薬の継続・調整をしつつ、副作用の有無も慎重に観察していくことになりました。
在宅での認知症ケアにおいて
認知症の進行に伴い現れるBPSDは、介護者にとって大きな負担となることがあります。しかし適切な薬物療法がはまることで、在宅療養を無理なく続けられるケースも少なくありません。ご家族の声を聴きながら、その人らしい生活を支えることの大切さを改めて感じさせられる一例でした。レキサルティとは?
レキサルティ(ブレクスピプラゾール)は、「抗精神病薬」と呼ばれる種類の薬ですが、比較的新しいタイプであり、従来の薬よりも副作用が少ないとされています。ドパミンやセロトニンなど、脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで、不安や興奮、幻覚などの症状を抑える作用があります。
認知症のBPSDとは?
アルツハイマー型認知症が進行すると、「物忘れ」以外に、次のような**行動や心理面の症状(BPSD)**が現れることがあります。
急に怒りっぽくなる
大声を出す、暴言を吐く
夜間の徘徊
被害妄想(「お金を盗まれた」など)
興奮して手がつけられなくなる
これらはご本人にとっても苦しいものですが、ご家族や介護者にとっても大きなストレスとなります。
レキサルティの効果とは?
レキサルティは、BPSDの中でも**「興奮・攻撃性・被害妄想・大声などの不穏症状」**に対して有効性があるとされており、以下のような改善が期待できます:
穏やかになる
興奮や怒りっぽさが減る
被害妄想が和らぐ
家族とのコミュニケーションが取りやすくなる
実際に、これまで施設入所も検討されていたような方が、レキサルティの効果により在宅生活を継続できたという例もあります。
なぜレキサルティが選ばれるのか?
副作用が比較的少ない(特に高齢者に使いやすい)
眠気やふらつきが少なめ(転倒リスクが低い)
長時間作用するため、1日1回の服用で効果が持続
これらの特徴から、在宅療養中の認知症患者さんにとって使いやすい薬とされつつあります。
注意点
レキサルティはあくまでBPSDを和らげる薬であり、認知症の進行自体を止めるものではありません。また、少量から慎重に開始し、効果や副作用を確認しながら調整することが大切です。
まとめ
レキサルティは、アルツハイマー型認知症に伴う「落ち着かない」「怒る」「被害的になる」などのBPSDに対して効果が期待できる薬です。副作用も少なく、在宅で穏やかに過ごすための一助となるケースもあります。在宅医療では、このような精神症状への対応も重要です。薬の選択やタイミングが生活の質に直結します。
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