胃薬の功罪

高齢の患者さんはポリファーマシーと呼ばれ沢山の薬を飲んでます。日本人は病院が好きであり、薬が好きです。そして患者さんが飲んでいる薬の代表として胃薬があります。その一つプロトンポンプ阻害薬(PPI)は胃酸の分泌を抑える胃薬です。 この薬のおかげで、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者数が劇的に減少しました。胃潰瘍で手術という話を医者になって聞いた覚えがないのですが、子供の頃のうっすらとた記憶に父親が胃潰瘍で手術かもという話をしていたのを覚えています。但し、胃酸は必要なので分泌されているのであり、胃酸の分泌が減ることで様々な弊害が起こります。 以下にPPIの副作用を列挙しておきます。

・腸管感染症(Clostridium difficile 感染症、サルモネラ感染症、カンピロバクター感染症)が増える。胃酸は強力な殺菌作用あるので、これを抑制されると菌が増えたり下痢起こしやすくなります。

・肝硬変患者で肝性脳症や特発性細菌性腹膜炎が起こりやすくなる

・肺炎が増える

・貧血が増える

・下部消化管障害(小腸粘膜障害、顕微鏡的大腸炎=慢性下痢の原因)を起こす

・骨粗鬆症、骨折が増える

・認知症、頭痛、腎障害

こんなに副作用があるのかとびっくりしてしまいます。但し安易な休薬も危険です。60歳以上では6割程度しか消化性潰瘍の痛みが現れないようで、PPI中断で潰瘍ができても分かりにくいので(出血で発症する)、超高齢者、認知症患者さんではPPIを安易にやめない方が良いとも言われています。自身も胃薬の処方なく痛み止めを整形外科で処方され吐血した患者さんを経験しています(痛み止めは血流障害を惹起し潰瘍形成起こす場合があるので胃薬処方がマストです)。そして、それに付随して貧血の進行から脳梗塞を起こし、私の科へ運ばれてきました。つまり、医療とは複雑系の中にあり、2進法では対応できないということでしょうか。