神経障害性疼痛疼痛を科学する22~
- 5月27日
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患者が訴える幻肢痛の痛みの性質には個人差があり、非常に多彩です。痛みは恒常的あるいは間欠的に生じます。
ナイフで切られるような痛み
焼けつく痛み
締めつけられるような痛み
しばしば切断する前に自覚していた痛みに似た痛み

幻肢痛・断端痛の発現頻度 幻肢は四肢切断を受けた患者のほぼ全員が体験するとされており、年齢や切断の高さ・切断側に関わらず出現します。チクチクするなどの不快な感覚が出現したのは56%と報告されています。
断端痛も四肢切断を受けた患者の多くが体験するとされますが、幻肢痛よりも少ないとされています。
推定される幻肢痛・断端痛の機序
幻肢痛のメカニズムについては、これまでさまざまな角度から研究がなされてきました。


薬物療法としてガバペンチンやモルヒネなどの内服やケタミンの静脈注射、外科的療法として脊髄刺激療法・脳深部刺激療法・運動野刺激療法があります。
内科的(薬物)療法
一般的な鎮痛薬であるNSAIDsは幻肢痛・断端痛に対して一般的には効果が認められません。以下の薬剤が臨床的に用いられています:
薬剤 | 対象 | 効果 | グレード | 注意点 |
ガバペンチン | 幻肢痛(Phantom limb pain) | 2,400mg/日で約52%の疼痛軽減 | A | 傾眠・ADL低下などの副作用は認めなかった。断端痛には38%軽減にとどまる |
モルヒネ | 幻肢痛 | 70〜300mg/日内服で1年後に約67%の疼痛改善 | A | 副作用としてattentionの有意な低下あり |
ケタミン(点滴) | 幻肢痛・断端痛両方 | 31.5μg/kg/45分の点滴静注で有効 | A | 14例中10例に不穏などの副作用。わが国での経口投与は薬剤入手が困難 |
アミトリプチリン | 幻肢痛・断端痛 | 125mg/日で14%程度の疼痛軽減効果のみ | D | 幻肢痛・断端痛に対しては無効との結果 |
Memantine(NMDA受容体拮抗薬) | 幻肢痛 | 30mg/日で47%の疼痛軽減を認めたのみ | D | わが国では2008年当時アルツハイマー認知症として臨床試験中 |

外科的療法として、病的なシグナルを除去する目的で断端部神経腫の切除術が行われてきましたが、必ずしも良好な成績が得られているわけではありません。エビデンスレベルの高い研究が十分に行われているものではありませんが、慢性電気刺激療法は除痛に関して一定の評価を受けています。
① 脊髄刺激療法(SCS)
脊髄背側に電極を留置して後索を電気刺激することにより、疼痛緩和を得ようとする治療法です。末梢性の神経障害性疼痛に有効であることが示されており、刺激によって幻肢の部分に重なるparesthesia(superposition)が得られると、有効率が高くなることが指摘されています。外科的療法
報告者 | 年 | 症例数 | 長期成功例数 | フォローアップ(月) |
Kranick et al | 1980 | 64 | 15 | >60 |
Siegfried | 1991 | 19 | 13 | — |
Lazorthes et al | 1995 | 25 | 10 | >24 |
Katayama et al | 2001 | 19 | 6 | >24 |
※有効率は20〜83%と広い幅があります。一般的に長期になるにつれ成績は悪くなり、Krainickらは2年後には45%、5年後には23%の有効率であったと報告しています(グレードC)。
② 脳深部刺激療法(DBS)
脳深部に存在する視床知覚中継核(Vc核)あるいは傍室中心灰白質(PVG)・傍中脳水道灰白質(PAG)に電極を定位的に挿入して微細な電気刺激を行い、疼痛緩和を得ようとする治療法です。Vc核を電気刺激することにより良好な結果が得られたとする報告が多く(グレードC)、報告されている有効率は20〜98%と広い幅があります。長期の刺激で有効率が低下する傾向があります。
③ 大脳皮質刺激療法(MCS)
大脳皮質(運動領野)の慢性電気刺激により、疼痛緩和を得ようとする治療法です。50%以上の疼痛軽減が得られた症例は53%であり(グレードC)、おおむね50〜70%の有効率が報告されています。脊髄刺激や視床刺激が有効でなかった症例を対象にして大脳皮質刺激療法を行った報告の中で、80%以上の疼痛軽減が得られた症例は20%でした。
④ 反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)
磁気刺激によって惹起された電場により、非侵襲的に刺激を行う方法です。視床痛などの神経障害性疼痛に対して一過性の疼痛緩和が得られることが知られています。幻肢痛に対しては1Hz・5Hzともに無効でした(グレードI)。有効であるとする論文は見い出せませんでした。
心理的アプローチ・その他
幻肢痛の治療には、これまでにあげてきた治療のみならず、心理的なアプローチも必要であり、bio-psycho-socialの3つの次元を考えて患者と接するべきだとする考えもあります。
在宅医療での幻肢痛・断端痛ケアについて
幻肢痛・断端痛に対しては一般的な鎮痛薬であるNSAIDsは無効であり、一般的に難治性です。しかし、外科的療法が劇的に奏効する症例があるため、内科的治療に抵抗する場合は積極的に脳神経外科医にコンサルトすることが必要です。
リラクセーション:より大きな鎮痛効果が得られることが報告されている
日常生活の指導:治療に際して重要な要因となる
神経訓練療法(新しい試み):切断端に電気刺激を加え、それを認識する訓練を繰り返し行うことで大脳新皮質に生じた再構築を修復させ、幻肢痛を改善させるといった新しい試みも報告されている
予防に関する研究
治療が困難であることから、予防するための研究もなされてきましたが、これまでのところ有効な予防策はありません。


在宅医療での幻肢痛・断端痛ケアについて 幻肢痛・断端痛に対しては一般的な鎮痛薬であるNSAIDsは無効であり、一般的に難治性です。しかし、外科的療法が劇的に奏効する症例があるため、内科的治療に抵抗する場合は積極的に脳神経外科医にコンサルトすることが必要です。
🌸 さくら在宅クリニックからのメッセージ
四肢切断後の在宅療養において、幻肢痛・断端痛は患者さんの生活の質(QOL)に大きく影響します。さくら在宅クリニックでは、薬物療法の管理から心理的サポート、そして必要に応じた専門医療機関への連携まで、総合的に対応いたします。切断後の痛みでお困りの際はお気軽にご相談ください。





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