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看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する52~在宅での需要が高まる「心エコー」の役割

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 10月29日
  • 読了時間: 3分

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〜高齢社会における心不全管理の新しい視点〜

① 心疾患は高齢者の主要な死因

日本は世界でも類を見ない超高齢社会を迎えています。それに伴い、心不全をはじめとする心疾患の患者数が急増しており、「息苦しい」「足がむくむ」「疲れやすい」といった訴えをもつ高齢者が増えています。

心疾患は、現在日本の後期高齢者の死因第2位を占めており、在宅医療でも避けて通れない重要な疾患領域です。

② 在宅での心不全モニタリングにエコーが活躍

慢性心不全の患者さんは、在宅での経過観察が中心となります。普段の生活の中で少しずつ体調が変化するため、医師や看護師が定期的に「増悪のサイン」を見極めることが大切です。

その際に役立つのが、**携帯型の心エコー(超音波検査)**です。呼吸苦や浮腫が出現したときに、心臓の動きをその場で確認できれば、「入院が必要か」「在宅で調整可能か」の判断がスムーズになります。

③ 在宅で心エコーを行う目的

心不全とは、心臓が全身へ十分な血液を送り出せなくなった状態です。在宅での心エコーでは、主に次の3つのポイントを押さえることで、心機能の大まかな評価が可能になります。

  1. 水分貯留の評価(下大静脈の拡張・肺うっ血の有無など)

  2. 収縮機能の評価(左室駆出率 LVEF の推定)

  3. 血行動態の評価(全身への循環状態)

これらを確認することで、心不全の安定・増悪のサインを在宅でも捉えることができます。

④ エコー観察の基本姿勢とプローブの当て方

心エコーを実施する際は、通常左側臥位または左半側臥位で観察します。代表的な描出部位は、胸骨左縁第3〜4肋間からのアプローチです。

ただし、在宅では体位変換が困難な患者も多く、肺気腫などで心臓の位置が下がっている場合もあります。そのような場合には、仰臥位のまま心窩部(みぞおち)から観察する方法が有用です。

⑤ 心不全評価の流れ(例)

心不全を疑った場合は、以下のような流れで評価を進めます。

  1. 身体所見の確認:呼吸困難・倦怠感・下肢浮腫など

  2. 血液検査(BNP)で心不全の可能性を推定

  3. 心エコーで機能評価 - LVEF(左室駆出率)40%未満 → 収縮不全型(HFrEF) - LVEF 50%以上 → 拡張不全型(HFpEF)の可能性

このように、心エコーを組み合わせることで、「心不全のタイプ」と「重症度」を非侵襲的に評価できます。

⑥ 在宅医療における心エコーの価値

近年、タブレットサイズの携帯型エコー装置が普及し、在宅でも簡易的に心機能を確認できるようになりました。

これにより、

  • 息苦しさの原因が心不全かどうかを即時に判断

  • 薬剤調整や入院判断の精度を向上

  • 医療・介護チーム内での情報共有が容易に

といった利点が生まれています。

まとめ

  • 心疾患は在宅医療で最も重要な疾患の一つ

  • 携帯型エコーを使えば、自宅でも心不全の早期評価が可能

  • 左心室の動き、水分貯留、循環動態の3点が観察の基本

心エコーは、“心臓の動きをその場で見ることができる唯一のツール”。在宅医療の現場において、今後ますます欠かせない存在となるでしょう。

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