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看護師さんによる在宅医療におけるエコーを科学する47~エコーで見るDVT⑥ ― 血栓の評価と判断の実際

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 10月17日
  • 読了時間: 4分

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深部静脈血栓症(DVT)の診断では、血栓の存在・範囲・可動性・性状を正確に把握することが重要です。ここでは、エコーによる血栓評価の基本手順を順を追って紹介します。

🔍血栓評価の4ステップ

1️⃣ 血栓検索(存在診断)2️⃣ 血栓範囲の把握3️⃣ 血栓中枢端(血栓尖)の可動性評価4️⃣ 血栓性状評価(急性/慢性の判定)

① 血栓検索(存在診断)

基本は B-mode(2Dモード)による短軸走査 です。静脈を短軸で連続観察しながら、適時圧迫を行い血栓の有無を判断します。

🔸圧迫法の原理

  • 正常静脈:圧迫により完全につぶれ、内腔が消失する。

  • 血栓あり:静脈内腔がつぶれず残存。(動脈は圧迫してもつぶれないため、比較対象として有用)

💡 静脈がつぶれない=血栓を強く疑う。短軸で検出後、長軸走査で血栓の連続性と内部性状を確認します。

🔸補助技術

  • カラードプラ法:血流信号の欠損により血栓の存在を確認。

  • 骨盤内観察:腸管ガスの影響があるため、やや強めの圧迫で背側の静脈を描出。

⚠️ 急性期の浮遊型血栓は可動性が高く、強い圧迫は禁忌です。血栓を押し出して塞栓を誘発する危険があるため、軽い圧迫で十分です。

② 血栓範囲の把握

血栓を認めた場合は、存在部位と範囲を記録します。観察結果はシェーマや報告書に明記し、再検査時の比較が容易になるようにします。

記録項目

内容

範囲

どの静脈区間まで血栓が及ぶか(例:膝窩〜総大腿静脈)

形態

閉塞型/非閉塞型/浮遊型

再疎通の有無

壁在化・血流再開の確認

中枢端位置

肺塞栓(PE)リスクの推定に重要

💡 全下肢静脈法では、骨盤内から下腿まで連続的に確認し、血栓範囲を正確に特定します。

③ 血栓中枢端(血栓尖)の可動性評価

中枢端(血栓尖)が5cm以上血管壁に固着していない場合、浮遊型血栓と呼ばれます。報告によれば、浮遊型DVTの約36〜60%にPE(肺塞栓症)を合併しており、PE予防の観点からも可動性評価は極めて重要です。

🔸観察のコツ

  • 長軸走査で血栓尖を描出。

  • 動き(拍動・呼吸性移動)の有無を確認。

  • 浮遊していればPE高リスクと判断し、即時医師連絡・抗凝固療法検討

④ 血栓性状の評価(輝度・均一性・再疎通)

血栓の輝度・内部均一性・周囲血流を評価することで、血栓の新旧を判定します。

時期

エコー輝度

内部性状

血流

圧迫性

所見例

急性期

低エコー(黒)

均一・柔らかい

欠如

弾性あり

内腔を充満、拡張静脈内に柔らかい血栓

慢性期

高エコー(白)

不均一・線維化

再疎通あり

硬く圧迫不可

壁在性血栓・退縮傾向

🩶 再疎通(recanalization)とは:かつて閉塞していた静脈内腔が再び通過可能になる状態。慢性DVTの自然経過でみられ、壁在化した残存血栓として観察されます。

🩻 レポート・記録のポイント

報告書には、以下の要素を簡潔にまとめます。

項目

記載内容の例

DVTの有無

+/−

血栓範囲

膝窩静脈〜総大腿静脈

血栓尖可動性

浮遊あり(中枢端5cm)

血栓性状

低エコー、充満型、再疎通なし

所見図

観察範囲をシェーマ化(観察外はマスク表示)

📋 この形式は、再検査・経時比較・チーム共有に非常に有効です。

🌍 ベッドサイドから災害医療・在宅へ

近年はポータブル超音波装置の進化により、DVT評価は病院だけでなく在宅医療・災害現場でも実施可能になっています。特に避難所・長期臥床環境では、VTE(静脈血栓塞栓症)予防として定期スクリーニングの重要性が増しています。

🩶まとめ ― 「血栓を見極める眼」を持つ

  • 血栓評価は 検索 → 範囲 → 可動性 → 性状 の4ステップで行う。

  • 圧迫して潰れない静脈=血栓あり

  • 浮遊型血栓は肺塞栓症リスク高、慎重な扱いを要する。

  • エコーはベッドサイド・在宅でも活用可能。

  • 定期観察により、DVTの進展や再疎通の経過も評価できる。

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