環境変化が引き起こすBPSDへの薬物対応 〜在宅医の現場から〜
- 賢一 内田
- 6月6日
- 読了時間: 3分

施設入居や入退院のタイミングなど、環境が大きく変化したことをきっかけに、認知症の行動・心理症状(BPSD)が急激に悪化することがあります。
例えば──施設の窓から飛び出してしまった方、介護者の首を絞めた方、ドアを蹴ったり椅子を投げたりしてしまう方。当院でも、こうしたケースに何度も直面してきました。
まずは「非薬物療法」から
もちろん、対応の第一歩は非薬物療法です。ユマニチュードなどのコミュニケーション技法を活用し、安心できる環境を整えることが大前提です。
しかし、それだけではどうにもならない場面もあります。介護者の安全を守るために、薬物療法が必要になることがあるのです。
当院での薬物療法の考え方
以下は、当院で実際に行っているBPSDに対する薬物療法の一例です。
処方の基本方針
コリンエステラーゼ阻害薬(アリセプト、レミニール、リバスタッチ) → 興奮や不穏を助長することがあり、中止対象とします。
ベンゾジアゼピン系(デパスなど) → 認知機能を低下させやすいため、漸減・中止が原則です。
🔹処方例とその理由
① セロクエル錠25mg 2錠 分2 朝夕食後② メマリー錠5mg 1錠 就寝前③ 抑肝散 7.5g 分3 毎食前④ デエビゴ錠5mg 1錠 就寝前
🔸セロクエル(クエチアピン)
強い鎮静作用があり、半減期が短いため翌朝への影響が少ないことが利点。錐体外路症状のリスクも比較的低く、BPSD+食欲不振の方にも適しています。
通常は12.5mgから漸増しますが、「一気に火を消す」イメージで100mg/日から開始し、落ち着いてから減量という方法も状況によっては有効と考えています。
ただし、糖尿病の方には禁忌であり、血糖上昇の副作用もあるため、定期的な血糖チェックが必須です。
🔸リスパダール(リスペリドン)
糖尿病の方にはこちらを使用。例:リスパダール錠0.5mg 2錠 分2 朝夕食後頓用で使用する場合は、**液剤(0.5〜1ml)**が便利です。ただし、錐体外路症状が出やすいため注意が必要です。
🔸メマリー
本来は認知症治療薬ですが、鎮静目的で使用することもあります。就寝前に処方し、めまいや眠気などの副作用に配慮します。
🔸抑肝散
漢方の中では比較的安全な部類。効く方には劇的に効果が出ますが、効かない場合は漫然と使わないのが原則。副作用としては、食欲不振や偽性アルドステロン症があるため注意が必要です。
🔸デエビゴ or デジレル(眠剤)
認知機能に影響を及ぼしにくいため、睡眠薬として使用。高齢者ではデエビゴ5mgや、デジレル25〜50mgが一般的です。
処方後の調整がカギ
これらの薬剤は、患者さんの鎮静具合、副作用の有無を確認しながら、適宜増減していきます。一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイドの薬物療法が、BPSDへの最善の対処法と考えています。
在宅医療の現場から
介護者を守ること、患者さん本人の尊厳を守ること。どちらも大切にしたい。そのために、非薬物療法と薬物療法を適切に組み合わせることが重要です。
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