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患者さんが不穏・せん妄になったら

せん妄に関して薬物治療は、簡単ですが安易かつ患者さんの為にならない治療です。

脳外科医として働いていた頃に、クモ膜下出血で救命した患者さんがいました。

60歳代の患者さんで比較的若く自分で食事も食べれるし、自排尿なども自立しておりリハビリ病棟でリハビリ行った後に自宅退院となりました。ただ、出血の影響で前頭葉が傷んでおり少し陽性症状(大きな声で叫んだり等)があるのが難点でした。この患者さんは精神科を受診し、薬を沢山処方され陽性症状は無くなりましたが寝たきりの様な病状となり、肺炎で運ばれてきたのを見て愕然とした記憶あります。

せん妄などの症状に対しては、まず最初は薬物を使わないのが原則です。

具体的には

せん妄治療の第一選択は非薬物的治療のようです。

・複数薬剤(ポリファーマシー)でせん妄の相対危険率は2.9倍となる。→できるだけ減薬する。

・向精神薬を使うと4.5倍。睡眠薬を使うと4.5倍。→できるだけ向精神薬、睡眠薬は使わない。

・身体拘束をすると3.2~4.4倍。→なるべく身体拘束をしない。

・膀胱留置カテを入れると2.4倍。→膀胱留置カテは適応を考える。間欠導尿で対応する。入れても早期に抜去する。

・BUN高値があると5.1倍。→脱水を改善させる。

・血糖、Na、K異常で3.4倍。→電解質バランスの補正。

・視力障害があると2.1~3.5倍、難聴があると1.3倍。 →メガネ、補聴器、義歯をつけてもらう。

・お気に入りのもの(家族写真、毛布、数珠、お気に入りの本、音楽など)を持ってきてもらう。

・せん妄中は家族がシフトを組んで24時間一緒にいてもらう。

・患者さんには、静かに落ち着いた声で今どこに何のためいるのか繰り返して説明する。

・指示を出すときは一度に一つ。

・マッサージは落ち着かせるのに有効なこともある。

・疼痛コントロールや早期リハビリも重要。

教科書的にはこんな記載があり、とても納得いきます。

写真は逗子在住山内明徳様撮影

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