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創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する②~スキン‐テアのリスクアセスメントと予防ケアのすすめ

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 6月10日
  • 読了時間: 3分


高齢者の皮膚はもろく、ちょっとした外力で「スキン‐テア(皮膚裂傷)」が起こることがあります。日本創傷・オストミー・失禁管理学会では、国内外の研究や実態調査に基づいて、スキン‐テアの発生・再発リスクを評価する3段階のアセスメント方法を提案しています(図1-3参照)。

🩺 第1段階:「スキン‐テアの保有と既往」をチェック

まず観察すべきは、現在スキン‐テアを保有しているかどうかです。目立つ創がなければ、既往歴を本人またはご家族に確認しましょう。

ただし、過去のスキン‐テアは本人も記憶していないことが多いため、「瘢痕(はんこん)」の形で確認するのがポイントです。代表的な瘢痕の特徴には以下があります(図1-4):

  • 白い星状の瘢痕(黄色矢印)

  • 白い線状の瘢痕(青色矢印)

これらが確認できた場合、スキン‐テアの再発リスクが高いと判断し、予防ケアをすぐに開始します。

🧬 第2段階:「個体要因(身体的リスク)」を評価

第1段階で該当がなければ、次に「個体要因」をアセスメントします。以下の全14項目のうち、1項目でも該当すれば次のステップへ

主なリスク要因:

  • 高齢(75歳以上)

  • 皮膚乾燥・鱗屑

  • 放射線治療歴

  • 認知機能低下

  • ステロイドや抗凝固薬の使用

  • 浮腫・水分脱水傾向 など

皮膚が「ティッシュペーパーのように薄く乾燥している」状態も、重要な観察ポイントです。

🚑 第3段階:「外力発生要因」のチェック

最後は、外的な摩擦・ずれが生じやすい状況かを確認します(図の赤枠部分)。患者の行動や介助・ケア方法に注目します。

該当例:

  • ベッド柵や車椅子に接触しやすい

  • 衣類・リネン類の摩擦

  • 介助移乗やストレッチャー使用

  • 医療用テープやリストバンドの使用 など

ここでも1項目でも当てはまれば、ハイリスクと判断され、予防ケアの導入が推奨されます。

🔍 実際のアセスメント例から学ぶ

図1-11と図1-12のように、皮膚に紫斑乾燥・鱗屑、あるいは瘢痕が見られる場合、それらはスキン‐テアの既往や予兆かもしれません。

📷 図1-11のような紫色の皮下出血斑は「紫斑」に該当し、皮膚が脆弱であるサインです。📷 図1-12では「乾燥・鱗屑」「ティッシュペーパー様皮膚」も確認され、注意が必要です。

💡 まとめ:スキン‐テアのリスクを見逃さない

スキン‐テアの多くは、防げる外傷です。しかし、見逃されやすく、放置すれば感染や褥瘡へ進行する恐れもあります。3段階のアセスメントを活用し、早期発見・予防的ケアの実施が重要です。

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