創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する⑪~「褥瘡ケア」は“評価”がすべて
- 賢一 内田
- 6月19日
- 読了時間: 4分
更新日:6月20日

治癒ステージに応じたドレッシング材の選び方
在宅医療や高齢者介護の現場では、「どのドレッシング材(被覆材)を使うか?」が褥瘡ケアのカギを握ります。貼るものを決める前に重要なのは、「今の褥瘡がどんな状態にあるか」を正しく評価すること。その判断基準となるのが、日本褥瘡学会が推奨する「DESIGN-R」スコアです。
DESIGN-Rって何?
「大文字」に注目して、治療ステージを見極める
DESIGN-Rは、褥瘡の状態を以下の7項目でチェックするスコアです:
D:深さ
E:滲出液(しんしゅつえき)の量
S:サイズ(大きさ)
I:炎症や感染の有無
G:肉芽(にくげ)組織の状態
N:壊死(えし)組織の有無
P:ポケットの有無
重症な場合は「大文字」で表記されるのが特徴です(例:N, G, E など)。治療の目標は、この大文字をすべて小文字にしていくこと。つまり、「悪化している部分を少しずつ改善させる」ために、最適なドレッシング材を選んでいきます。
褥瘡の“治りかけ”には、どんなケアが必要?
褥瘡の治癒は、大きく4つのステージに分けて考えます。それぞれのステージに合った目的とケア方法を簡単にまとめると、以下のようになります:
ステージ | ケアの目的 | おすすめの材料例 |
壊死組織期(Nが大) | 死んだ組織を取り除く | ハイドロゲル、湿潤ガーゼ |
感染・炎症期(Iが大) | 滲出液を吸収+抗菌 | 銀入りドレッシング、フォーム材 |
肉芽形成期(Gが大) | 血流促進+保護 | ハイドロコロイド、フォーム材 |
上皮化期(全て小文字) | 乾燥を防ぎながら保護 | フィルム材、軟膏ガーゼ |
深い褥瘡と浅い褥瘡では、対応がまったく違う!
✅ 深い褥瘡(D・N・Gなどが大文字)
慢性的な状態で、時間をかけて段階的にケアが必要です。
ドレッシング材も、「除去 → 保護 → 縮小促進」と変えていくのがポイント。
✅ 浅い褥瘡(d1・d2など)
表皮や真皮にとどまるもの。水ぶくれや小さな傷のような状態です。
シンプルな保護材(軟膏ガーゼ、透明フィルムなど)でOKです。
DESIGN-Rが使えないケースもあります!
褥瘡が急にできたばかりの「急性期」や、深さがまだ分からない(D=DU)のときには、DESIGN-Rの評価は慎重に扱う必要があります。このような場合は、エコーなどで深部の損傷(DTI)の有無もチェックしながら、ドレッシング材を選ぶようにしましょう。
ケアの流れはこの4ステップ!
壊死組織を取り除く(N→n)
肉芽が育ってくる(g出現)
創のサイズが小さくなる(s減少)
皮膚がふさがってくる(上皮化・ポケット閉鎖)
この段階ごとにケアを変えていくと、褥瘡の治りも早くなり、質の高いケアにつながります。
最後に:貼る前に、まず“見る”ことが大切
「どれを貼るか」ではなく、「どう評価するか」で治療は決まります。
DESIGN-Rは単なる点数ではなく、患者さんの傷の変化を“見える化”するための大切な道具です。毎日の観察を通じて、最適なドレッシング材を選び、再発しにくい褥瘡ケアを一緒に実践していきましょう。
📚 参考文献
日本褥瘡学会『褥瘡予防・管理ガイドライン』照林社
真田弘美監修『褥瘡ケア完全ガイド』学研
DESIGN-R 実践活用マニュアル(日本褥瘡学会)
🌸 スキン-テアにもご注意を!高齢者に多い「皮膚の裂け傷=スキンテア」も、正確な評価と予防が大切です。STAR分類を活用し、日々のケアに生かしましょう。
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