創傷ケア(スキン テア、褥瘡、下肢潰瘍)を科学する27~どう見極める?「下肢潰瘍」の病態評価と検査方法
- 賢一 内田
- 3 日前
- 読了時間: 3分

足にできた潰瘍(ただれ)がなかなか治らない…。その背景には、糖尿病、動脈硬化、静脈瘤、神経障害などさまざまな病態が関与している可能性があります。正確な診断と適切な治療方針を立てるためには、原因を特定するための評価と検査が重要です。
✅ 1. 動脈血流を調べる検査
🔹 ABI(足関節上腕血圧比)
正常値:0.9〜1.3
0.9未満は下肢虚血を示唆
0.4未満は**重症下肢虚血(CLI)**の可能性
1.3以上は血管の石灰化による影響を疑う
🔹 TBI(足趾上腕血圧比)
慢性腎不全や透析患者など高度石灰化でABIが信頼できない場合に有用
正常値:0.7〜1.0
🔹 SPP(皮膚灌流圧)
血行再建やデブリードマンの判断に重要
SPP ≥ 40mmHg → 創傷治癒可能
SPP < 40mmHg → 外科的処置前に血行再建を要検討
✅ 2. 静脈還流を調べる検査
🔹 下肢静脈エコー(超音波断層+ドプラー法)
静脈の閉塞・逆流の有無を評価
静脈性下腿潰瘍の原因検索の第一選択
非侵襲的かつベッドサイドで簡便に実施可能
✅ 3. 知覚神経障害を調べる検査
🔹 モノフィラメントテスト(5.07)
足底に圧刺激を与え、感覚低下の有無を判定
1秒間当てて「感じない」→ 末梢神経障害あり
🔹 振動覚検査
128Hzの音叉を内果(内くるぶし)に当てて振動を感じる時間を測定
10秒以下で「振動覚低下」の可能性あり(若年者基準)
📊 評価項目のまとめ:下肢潰瘍の鑑別ポイント
評価項目 | 糖尿病性潰瘍(神経障害) | 動脈性潰瘍(虚血) | 静脈性潰瘍(うっ滞) |
好発部位 | 足底・趾先(荷重部) | 足趾先・外側 | 内果周囲 |
深さ・形状 | 深部まで進行しやすい | シャープで深い潰瘍 | 表在性で不整形 |
滲出液 | 感染時に悪臭を伴う | 少量 | 多量、黄白色で臭いあり |
周囲皮膚の温度 | 温かい | 冷感 | 浮腫に伴い温かい |
感染リスク | 起こりやすい | 比較的起こりにくい | 頻発しやすい |
関連疾患・所見 | 神経障害、変形、白癬 | PAD、腎不全、冷感 | 静脈瘤、色素沈着、浮腫 |
🏠 在宅医療における下肢潰瘍評価の重要性
在宅では以下の観点で医師・看護師・療法士が連携することが重要です:
潰瘍の病態分類(神経性・虚血性・うっ滞性)
血流評価(SPP, ABI, TBIなど)
視診による色調・浮腫・変形・痛みの確認
感染兆候(発赤、熱感、悪臭滲出液)
足部ケア(爪切り、足浴、靴選び)
🎥 YouTubeでも学べます!
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