勤務医時代に入院に際して全例取させられていたのが、身体抑制に関する同意書でした。これは手術あとに、麻酔の影響などにより前後不覚となる場合が往々にしてあり、これを取得することはある程度、理に適っていると思います。但し、脳卒中を主に治療していると当然、高齢者が治療対象のメインとなります。そして、動けない患者さんは動こうとして転倒してしまうことは、よくあります。しかし、問題はよく動ける人も抑制することが多いということです。これは転倒などのリスクを避ける為のものであり、主に管理する側の都合が主です。実際転倒により、頭の中に出血したり、背骨の骨の骨折することは時にあります。これは病院に限らず、高齢者施設でも同様です。施設で歩かせない理由として、「勝手に歩いて転倒して、骨折でもして歩けなくなったら大変だ」というものがあります。しかし、歩かせないで座りっぱなしでいると、足腰が弱くなって歩けなくなってしまいます。「歩けなくなったら大変だ」から始まったのに、結果として歩けなくなるわけです。これでは本末転倒ではないでしょうか。「転倒して骨折し歩けなくなる」ことと、「歩かせないことで廃用が進み歩けなくなる」ことは、歩けなくなるという点では同じだと思うのですが如何でしょうか。
一方で、立つ・歩くのには、体の様々な器官に生理的に多くのメリットがあり、人としての尊厳を守ることにもつながります。新版 間違いだらけのリハビリテーション 「起立-着席運動」のすすめ | 三好 正堂 |本 | 通販 | Amazonは、以前紹介した本ですが、立ち上がるという行為には、沢山の効用あり『起立-着席』という運動により嚥下機能まで改善するとされています。また、認知機能にもよい影響を及ぼします。つまり、「歩かせない→廃用が進み歩けなくなる」よりも「転倒→骨折→歩けなくなる」方がマシとも言うこともできます。
そういうわけで、「転倒のリスクがあっても歩かせる」という選択肢があってもよいのではないかと思っています。
しかしそうは言っても、「転倒して怪我をした場合、責任を負わなければいけない」と考えるとなかなか歩かせられないので、入所前に、「転倒しても歩かせる同意書」をとるのがいいのではないかと思います。もちろん安全第一で転倒するなら抑制してベッドや車いすから動けないようにして下さいという選択肢も与えられるべきですが、、
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