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【症例から学ぶ】腰痛の陰に潜んでいた“股関節の緊急疾患”〜一生勉強、一生青春〜ら

  • 執筆者の写真: 賢一 内田
    賢一 内田
  • 4月2日
  • 読了時間: 2分


今回ご紹介するのは、腰痛で杖歩行されていた患者さんのレントゲン画像です。


最初は腰椎に注目していたため、診断がつくまでに時間がかかってしまいました。何度かの往診の中で「骨盤や下肢も痛い」との訴えがあり、そこでレントゲンを撮影。赤丸の中、大腿骨頭の一部が**“溶けている”ように見える**画像が写っていました。私にとっても初めて見るような、非常に衝撃的な画像でした。

すぐに画像を整形外科医に共有したところ、診断は急速破壊型股関節症(Rapidly Destructive Coxopathy:RDC)。恥ずかしながら、当時はこの疾患名を初めて耳にしました。

その場で地域の基幹病院へ紹介、当日中に受診・入院・手術と進みました。このように緊急性の高い疾患を漫然と診ていたことを深く反省した症例でした。

急速破壊型股関節症とは?

明らかな基礎疾患がない高齢者の股関節が、半年〜1年の間に急速に破壊される病態のことをいいます。

主な原因(とされているもの)

  • 骨盤の傾斜変化(骨盤後傾)

  • 骨粗鬆症

  • 大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折

  • 骨吸収の亢進

  • 寛骨臼形成不全 など

※実際はこれらが複雑に絡み合い、はっきりとした原因はわかっていないことが多いようです。

急速破壊型股関節症の特徴

  • 6〜12か月という短期間で股関節が破壊される

  • 強い股関節痛がある

  • 股関節の可動域は比較的保たれている

  • 高齢者に多い

  • 正常な股関節から発症することが多い

レントゲン画像では、大腿骨頭が著しく破壊され、骨盤側まで及ぶこともあります。

治療は?

治療は「保存療法」と「手術療法」に分けられますが、進行が早いため保存療法でのコントロールは難しいことが多く、人工股関節置換術(THA)が基本的な選択肢となります。

骨破壊が進みすぎると、通常のインプラントでは対応できず、大型インプラントや大量の骨移植が必要になるケースもあります。早期発見・早期手術が極めて重要です。

最後に

「腰痛」と一言で言っても、その裏に想定外の病態が潜んでいることがあります。「思い込み」によって診断が遅れてしまう怖さを、改めて痛感しました。

まさに一生勉強、一生青春。日々の診療を通じて、学びを重ねていきたいと思います。

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