「褥瘡はただの傷じゃない」──老いとともに生きる褥瘡ケアの視点
- 賢一 内田
- 4月19日
- 読了時間: 2分

褥瘡(床ずれ)は、単なる皮膚の傷ではありません。私たち哺乳類が陸で生きられるのは、皮膚という「バリアー」があるおかげです。体内にある“母なる海”を外界から守る皮膚──その防御機能が破綻してしまうのが褥瘡なのです。
このバリアーが壊れると、当然ながら感染のリスクが高まります。体圧管理や湿潤療法などのケアを行っても、残念ながらなかなか褥瘡が良くならないこともあります。それは、全身状態や栄養状態の悪化、血糖コントロール不良、末梢の血流障害など、複数の要因が褥瘡の治癒を妨げているからです。
介護の現場では、「褥瘡ができてはいけない」と考える方も少なくありません。実際、褥瘡ができたことで責任追及のような雰囲気になることもあります。
しかし、そもそも褥瘡はどのようにしてできるのでしょうか。食事が摂れなくなり、栄養状態が落ち、動けず寝たきりになる。身体の一部に持続的な圧力がかかる──これはまさに老衰の過程そのものなのです。
私たちは老いに逆らうことはできません。どれだけの対策を講じても、治らない褥瘡があるという現実があります。そんなとき、「褥瘡とともに生きる」という選択肢があってもいいのではないでしょうか。
肺炎で亡くなることは受け入れられるのに、褥瘡が感染源となって亡くなることは「いけない」とされる。その考え方には、どこか偏りを感じます。大切なのは、褥瘡だけを見ずに高齢者をトータルで診るという視点です。
在宅医療では、できる限りのケアは行います。しかし、医学がどうしても及ばない褥瘡があることを、まず私たちが知っておくことが大切だと感じています。
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