「歩ける喜び」をもう一度──慢性疼痛とオピオイド治療の再考
- 賢一 内田
- 6月5日
- 読了時間: 2分

私が脳神経外科医として勤務していた頃、主に扱っていたのは脳の血管障害──くも膜下出血、脳内出血、脳梗塞といった疾患でした。加えて、脊椎外科をサブスペシャルティとして手がけ、脊椎外科技術認定医の資格も取得しています。
しかし、在宅医療に携わるようになって特に難しさを感じているのは、超高齢者における慢性の腰痛・下肢痛への対応です。成人脊柱変形(いわゆる側弯症)に代表される疾患は、手術が困難なケースも多く、治療選択に悩まされる場面が増えました。
がん性疼痛に対しては、オピオイド(いわゆる「麻薬」)の使用により比較的明確な方針で対処できます。しかし、がん以外の慢性疼痛では、非麻薬性の鎮痛薬では効果が乏しく、薬剤がどんどんと増えていくばかりという現状があります。
■ デュロテップによる在宅での劇的改善
最近、印象深いケースがありました。「足の痛みで終日ベッドから出られない」という高齢患者さんの在宅診療の依頼を受け、**デュロテップ(麻薬性貼付剤)**を導入しました。すると、痛みが劇的に軽減され、200歩以上も自宅内を歩けるようになったのです。
ご本人からは、「暖かくなったら外へ散歩に行きたい」という言葉が聞かれ、医療者として本当に心を動かされました。痛みに苦しんでいた姿を知っているからこそ、その変化は鮮明でした。
■ 慎重な運用が前提──だからこそ支援が必要
もちろん、オピオイドには依存性や呼吸抑制などのリスクが伴うため、慎重な管理と十分な説明が必要です。訪問薬剤師による薬剤指導、そしてご家族の理解と協力が不可欠です。
痛みは数値や画像で「見える化」できない症状だからこそ、軽視されがちです。ですが、痛みは生活の質を著しく損なうものであり、時に生きる希望すら奪ってしまうものです。だからこそ、私たち医療者は、がんであろうとなかろうと、「痛みをどう取り除くか」にもっと敏感でありたいと考えています。
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