「先生、あとどれくらいですか?」というご家族の問いに
- 賢一 内田
- 3月31日
- 読了時間: 2分
在宅医療の現場で、ご家族から最も多く寄せられる質問のひとつに「先生、あとどれくらいでしょうか?」という問いがあります。
このような場面では、まず「患者さんは最期の瞬間まで聴覚は保たれていると考えられています。ぜひ、そばで声をかけながら過ごしてあげてください」とお伝えするようにしています。
しかし一方で、医療的にはある程度の予後予測が可能です。それによりご家族が心の準備を整えたり、遠方のご家族や親しい方を呼ぶタイミングを検討することができ、結果として「悔いのない看取り」に繋がるケースも少なくありません。
血圧低下は指標にならない——臨死期のバイタル変化について
予後の目安として「血圧の低下」が挙げられることがありますが、実際の臨床では不適切な指標であると考えています。というのも、収縮期血圧が60〜80mmHg台で1週間以上経過するといった症例は、在宅でも決して稀ではありません。
代わりに、身体所見として参考になるデータがあります。医学書院刊『死亡直前と看取りのエビデンス』では、以下のような平均出現時間が報告されています。
死前喘鳴(いわゆる“喉のゴロゴロ音”):約57時間前
下顎呼吸(いわゆる“あご呼吸”):約7.6時間前
末梢チアノーゼ:約5.1時間前
橈骨動脈触知不可:約2.6時間前
私自身は、「下顎呼吸」が出現した時点を一つの目安とし、ご家族に「今のうちに皆さんお集まりください」とお声がけするようにしています。
死亡直前徴候が出ないケースもある
注意すべき点として、こうした徴候が必ずしも出現するわけではないということです。臨床経験上、約2割の方は急激な病態の悪化や心停止など予測困難な経過で亡くなられることもあります。
そのため、予後予測においては複数の身体所見と疾患の経過を総合的に判断しつつ、常に「いつ急変が起きてもおかしくない」前提でご家族と情報を共有しておくことが重要だと考えています。
今後もこのような医療の現場のリアルを、動画やブログを通してお伝えしていきたいと思います。
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